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ムサビとベムスターが好きだった叔父の物語  作者: 巳ノ星 壱果


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4話 奇跡の握手

叔父の事を「にいちゃん」と呼ぶ私なので、作中はにいちゃんという表現をさせて頂きます。

4話 奇跡の握手


小学生の時、私が海外から一時帰国した時に、にいちゃんが会いにきてくれた。


「石ノ森萬画館に行きたい。」


そう言うので、長い道のりを車に揺られながら、私はにいちゃんと一緒に向かった。


入り口には、石ノ森章太郎さんの「奇跡のブロンズ手」があった。


それを見つけた私は、好奇心のまま思わず走り出した。


その瞬間、にいちゃんが叫んだ。




「壱果、だめだー!」




次の瞬間、体がふわっと横に押された。

軽くだったので、怪我はなかった。



にいちゃんはそのまま、ブロンズ手の前に立った。


挿絵(By みてみん)


そして、念願のブロンズ手に向かい、




「石ノ森様、やっと会えましたね。」




まるで本人に話しかけるかのように、ぶつぶつと何かを語りかけながら、そっと握手を交わしていた。


何分話しているんだろう?と思いながら、私はその横で、ただ順番を待っていた。



仮面ライダーを愛していたアニメ好きのにいちゃんにとって、ここはずっと憧れていた場所だったのだろう。


私は仮面ライダーを詳しく知らなかったけれど、にいちゃんが嬉しそうだったから、それだけで十分だった。


少し強く押されたのに、なぜか、胸の奥があたたかかった。


吹き飛ばされたけど、そんな少年みたいなにいちゃんが、私はたまらなく好きだった。


にいちゃんは、アニメを愛する少年だった。


萬画館の入り口に立っていた受付のお姉さんの制服を見て、


「素敵ですね」


と、急に話しかけはじめた。



石ノ森萬画館に来られた嬉しさと興奮で、

にいちゃんの会話は止まりそうにない。


困ったように、

それでも優しく笑っているお姉さんの表情を見て、

私はなんとなく察した。


このままだと、しばらく終わらない。


小学生だった私は、

「にいちゃん、ライダー見に行くよ」と手を引っ張った。


にいちゃんは、コミュニケーション能力が高いわけでもなく、ナンパしたいわけでもないのは分かっている。


ただ、この感動を、誰かに伝えたかっただけなんだろう。


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