3話目 つつじのき
叔父の事を「にいちゃん」と呼ぶ私なので、作中はにいちゃんという表現をさせて頂きます。
第三話 つつじのき
私は叔父がどうやって生計を立てているのか?
よく分からなかった。
きっと、どこかでアルバイトをしながら
漫画を描いていたのだと思う。
年に一度くらいは会っていた。
ねえ、兄ちゃん、なんか描いてよ。
そう言うと
「いっちゃん、まってね」
叔父はいつも
紙とペンを取り出した。
へのへのもへじを少し改造した
不思議なイラスト。
それが叔父の描くキャラクターだった。
その名前は
「つつじのき」さん
今思えば兄ちゃんらしい
やさしくて、少しふざけた絵だった。
王道アニメのおジャ魔女どれみ が大好きだった。
特にはなちゃんが大好きだった。
だからかわいいキャラクターが描かれるのを
当たり前みたいに期待していた。
でも目の前に現れたのは
へのへのもへじみたいな
ちょっと不思議な顔。
私は固まってしまった。
心の中で
「私がお願いしたかったのと、ちがう」
そう思った。
でも、兄ちゃんが描いてくれたものに文句なんて言えなかった。
動物も、人物も、いろいろ描いてくれたけれど
どれも少しずつ、イメージと違った。
もしかしたら
これが元美大生のデッサンなのかな?
そんなふうに思って
小学生の私は、何も言えなかった。
本の虫と呼ばれていた兄ちゃんが
どうして
つつじのきさんなんてキャラクターを考えたのか
今でもふと考えることがある。
もしかしたら
にいちゃんの友人が作った名前だったのかもしれない?
それとも兄ちゃん自身が生み出したのか?
つつじの花言葉は、色によって意味が違うらしい。
努力
訓練
節度
慎み
自制心
そんな言葉が並んでいる。
今になって、声の届かない兄ちゃんに聞いてみたくなる。
「つつじのきさんは、なんで生まれたの?」
本の虫だった兄ちゃんなら、
きっともっと他の文字でもいくらでも顔を作れたはずだ。
それでも、つつじのきさんを選んだ理由を私はまだ知らない。




