2話目 カンガルーのボールペン
第二章 カンガルーのボールペン
小さい頃から、叔父は優しかった。
理由は分からないけれど、兄よりも私を可愛がってくれた。
私にとっては叔父だったけど、母が「兄ちゃん」と呼ぶので、
私も「兄ちゃん、兄ちゃん」と呼んでいた。
昔の写真を探しても、
ひとりピースしている兄と、
私の顔にほっぺたをくっつけて笑顔の兄ばかりだった。
お正月、我が家に来た叔父に、母が言った。
「子供達にお年玉とかないの?」
「あ、これあげるよ」と、ガサガサとカバンから取り出した。
なんだろう?って思った。
それは、カンガルーがボクシングをしているとパンダがボクシングしているボールペン2本だった。
普通だったら、お金のほうが嬉しいと思うんだろう。
でも私は、そのボールペンがすごく嬉しかった。
兄弟は見向きもしなかったから、私は2本ボールペンを手に入れた。
私は夢中で
カンガルーとパンダの腕を何度も動かした。
多分安物だったのだろう。
二日くらいで壊れてしまった。
それでも、とても嬉しかった。
父は仕事人間で単身赴任が多く、あまり家にはいなかった。
不器用な父だったから、会えない分流行りのおもちゃをたくさん買ってくれた。
でもきっと私はどこか寂しかった。
流行りのおもちゃよりも兄ちゃんが
なけなしのお金で用意してくれたもの。
あのカンガルーのボールペンのほうがずっと大切だった。
兄ちゃんらしくて愛らしかった。
あの頃から私はお金よりも兄ちゃんの気持ちを
受け取っていたのだと思う。




