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ムサビとベムスターが好きだった叔父の物語  作者: 巳ノ星 壱果


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18話 優しいうそ

 第18話 優しいうそ


 あんなに足の踏み場がない部屋にも、

 にいちゃんの部屋には友人が遊びに来ていたようだ。


 ある日、こんなLINEが届いた。


 にいちゃんには「うそつき」と呼んでいる友人がいた。


 これは、うそつきさんの話。


 にいちゃんには何人も友人がいたようだが、

 私が名前を聞いたことがあるのは

「うそつきさん」と「ブサイクさん」だけだった。


 うそつきさんは、コミケで一緒に漫画を出している友人のようだった。


「いやー、こないだにいちゃんの部屋に

 うそつきが遊びに来て、にいちゃんと将棋を指したんだよ」


「うん、それで?どっちが勝ったの?」


「平成最後の勝負はにいちゃんが勝ったんだ。

 でも、うそつきはハワイから帰ってきたばかりで、

 時差ぼけで負けたんだよって言ったんだ。

 ハワイに行ったのはどうやら本当らしいんだよ」


「そうなんだ。勝ってよかったね」


「令和最初の勝負はどちらが勝つかわからないんだ。

 うそつきの方が、にいちゃんより少し強いんだ」


「そうなんだね。でも勝ててよかったね」


 心の中で、あの部屋にも

 うそつきさんは遊びに来てくれたのかと思った。


 一体どこのスペースで将棋を指したのだろう?


 そんなことを思ってしまったけれど、

 聞いてはいけない気がして、やめておいた。


 令和最初の将棋の結果は、

 結局聞けないまま終わってしまった。


 きっと、うそつきさんの勝利だったのだろう。


 どうして「うそつき」という名前なのかは、分からない。


 今になって、ふと聞いてみたくなる。


「にいちゃん、うそつきさんは

 どこが嘘つきだったの?

 本当は、うそつきさんのことが好きだったんでしょう?」


 もしかしたら、

 二人で独身を貫こうと約束していたのに、

 うそつきさんが若い奥さんをもらったことを

 からかっていたのかもしれない。


 それとも、たまに嘘をつくから

 本当にシンプルに「うそつき」だったのか。


 理由は、よく分からない。


 そんなことを、今になって思う。


 でも、きっとにいちゃんは

 その「うそつきさん」のことが

 大好きだったのだと思う。


 なぜなら、にいちゃんは

 嘘がつけない人だったから。


 嫌いな人と一緒に遊ぶなんてことは、

 きっとできなかったはずだ。


 だから、姪の私から見ても

 うそつきさんは

 にいちゃんの大切な友人だったのだと思う。


 にいちゃんは、ドラ○もんが大好きだった。


 だから「うそつき」という呼び方も、

 きっと悪口なんかじゃなくて、

 あの漫画に出てくる友達みたいな呼び方だったのだと思う。


挿絵(By みてみん)


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