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ムサビとベムスターが好きだった叔父の物語  作者: 巳ノ星 壱果


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17話 宝物の城

 第17話 宝物の城


 にいちゃんは、本の虫と呼ばれるだけあって、ものすごい数の本を持っていた。


 古びたアパートで、一度、本の重さで床が軋んだことがあると聞いていた。


 にいちゃんは、その古いアパートが改築されてからも、同じ部屋に住み続けていた。




「いやー、大家さんがいい人でね。家賃が借りた当時のままなんだよ。いっちゃん、すごいと思わないかい?」




「そうなんだ。にいちゃんの人徳だね。大家さんがいい人でよかったね。」



 にいちゃんは変わり者だけど、人には嫌われない。

 むしろ、好かれる。そんな人だった。




 電子書籍が流行っているこの時代でも、

 にいちゃんは本を買うのが好きだった。


 ある日、母と一緒に初めてにいちゃんの部屋を見に行った。

 二人で片付けをしにいった。



 間取りは1Kのはずなのに、部屋のあちこちに本が積み重なっている。



 わたしは、唖然とした。

 想像を絶する物の多さに、私は言葉が出なかった。


 足の踏み場が少しあるだけで、ほとんど物置のような部屋だった。


 狭い部屋に、ぎっしり詰まった本。





「にいちゃん、これはいる? いらないよね? 捨てるよ」



「いやー、それはにいちゃんが使うものなんだ」



 その言葉のやり取りを何度も繰り返した。




 白いキャンバス。

 きっと、これはにいちゃんがムサビで描いたものなのだろう。


 棚の上には、たくさんのフィギュア。


 そう。ベムスターだった。


挿絵(By みてみん)


 好きなものだけを集めた、少し雑然とした世界。


 でも、そこは確かに、にいちゃんだけの場所だった。


 にいちゃんにとって、そこはにいちゃんだけの城だった。


 片付けに行ったはずなのに、ほとんど片付けさせてもらえなかった。



 価値があるものなのかもしれない。でも私には価値がよく分からないものに見えた。


 でも、にいちゃんにとっては

 きっと全部、宝物だったのだ。


 だから私は捨てるのを諦めて帰った。  




 片道4時間かけてにいちゃんの部屋を掃除しに来たけれど、にいちゃんにとっては、ここが宝物の城なのだ。



 だったら、それでいい。


 にいちゃんがマイペースに自由に生きていてくれれば私はそれで満足だったんだ。


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