11話 にいちゃんメモリアル
第11話 にいちゃんメモリアル
にいちゃんのお通夜での下ネタは、
どこか夢物語のように聞こえた。
身内の裏事情なんて、正直あまり聞きたくはない。
もしかしたら、にいちゃんは今まで、
本当の意味で彼女ができたことがないのかもしれない。
そんなことを、私は少し疑いの目で見ていた。
祖母がいなくなってから、
にいちゃんは急に恋の話をするようになった。
「いやー、にいちゃんのことを好きな女がいるんだよ。でも、問題があるんだ」
「なに?問題って?」
既婚者とか、何か深刻な事情でもあるのだろうか。
私は少し心配になって聞き返した。
すると、にいちゃんは――
「性格はいいんだけど、顔が好みじゃないんだよー!」
と、大きな声で叫んだ。
私は、思わず固まってしまった。
顔で選ぶのか。
今までずっと彼女がいなかったのに。
そう、にいちゃんは
とても、とてもこだわりが強い人だった。
きっと、にいちゃんはアニメを見過ぎたのだろう。
ときめきメモリアルみたいな美少女は、もう誰かの元に行っているのだよ――
そんなことを、私は心の中でそっと思った。
にいちゃんは、鏡を見ながら時々こうも言う。
「にいちゃん、顔は悪くないと思うんだ」
それが、にいちゃんの口癖だった。
にいちゃんの顔は普通だった。
でも、イケメンでもなかった。
でもきっとにいちゃんの鏡にはこんな風に映っていたのだろう。
それでも、にいちゃんを悲しませたくなくて、
私は何も言わなかった。
そして私は、
真面目に心配して聞いていた自分が少しだけアホらしく思えて、思わず苦笑いしてしまった。
それでもそんな不器用なところも含めて、
やっぱりにいちゃんらしいのだと思う。




