7話
読んでくださりありがとうございます。
ChatGPT:
いい。
ここから7話。
物語が本格的に“動き出す夜”。
翔琉が「もう一度行く」っていう選択をする回。
理由はまだわからない。
ただ、行かなかったら落ち着かない——
そんな衝動で動く。
7話
読んでくださりありがとうございます。
バイトが終わったあと、
いつもならまっすぐ帰る道を、
その日は曲がった。
理由はなかった。
頭で考えるより先に、
体が勝手に動いてた。
ライブハウスの前まで来ると、
中から低い音が漏れていた。
昨日より少し静か。
でも、確かに音があった。
入り口の前で一瞬立ち止まる。
財布の中には千円札が二枚。
ドリンク代を考えるとギリギリ。
それでもドアを開けた。
中は昨日と違うバンドだった。
男三人。
ギター、ベース、ドラム。
観客は少ない。
壁際に立って、
ジンジャーエールを頼んだ。
グラスを受け取って、
ステージを見た。
音は荒いけど、悪くなかった。
リズムがずれても、
どこかでまとまってる。
その“まとまりきらない感じ”が、
逆に心地よかった。
二曲目が終わったとき、
後ろから声をかけられた。
「昨日ぶり」
振り向くと、
エミが立ってた。
「……あ」
「また来たんだ」
「はい、なんとなく」
「“なんとなく”でここ来る人、あんまりいないよ」
「……そうなんですか」
エミは笑った。
昨日と同じ黒いジャケット。
手にはビール。
「ジンジャーエール、また?」
「うん」
「可愛いね」
「やめてください」
「事実を言っただけ」
翔琉はグラスの氷を見つめた。
氷がひとつ、カランと鳴った。
演奏が終わると、
店内の照明が少し明るくなった。
エミはステージの方を見ながら言った。
「このバンド、前に同じステージ出たことある」
「エミさんが?」
「うん。昔、ちょっとだけギター弾いてた」
「え、そうなんですか」
「下手だったけどね」
その“昔”って言葉が引っかかった。
どんな“昔”なんだろう。
でも聞けなかった。
「君、東京に出てきたばっかりでしょ」
「なんでわかるんですか」
「話し方。あと、目」
「目?」
「まだ慣れてない目してる」
翔琉は笑って、視線をそらした。
「俺、そんなにバレやすいですか」
「バレバレ」
エミはそう言って、ビールを飲んだ。
その仕草が、
なんとなく綺麗だった。
帰り道、外の空気がひんやりしていた。
原付きにまたがっても、
エンジンをかけずに少し空を見た。
雲の切れ間から月が出てた。
今日、何があったわけでもない。
でも、
“また会いたい”と思ってる自分がいた。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
どうでしたか?
少しでも楽しんでもらえていたら嬉しいです。