水の勇者を失った
王城に招かれたフリードとファイエン。
エリアスは水資源が豊富で、城内の庭園に噴水や池などがある。
太陽に照らされ、水がサンキャッチャーのようにキラキラと輝いていた。
そういった雰囲気もあいまって、神秘的な印象をフリードは抱いた。
城内に入ると、白の壁に青と水色を基調とした装飾が並ぶ。
多様な植物も生い茂っており、落ち着いた雰囲気がある。
「この先に陛下がいる。失礼のないように」
(この先に、エリアス国王が――)
騎士の案内の元、フリードとファイエンは豪華な装飾がされた重厚な扉の前に着いた。
騎士の一人に忠告され、フリードの緊張が高まる。
「はい」
ファイエンは王族の謁見に慣れているのか、余裕があり、忠告をしてくれた騎士の一人に返事をする。
ゆっくりと扉が開かれ、フリードとファイエンは謁見の間に入った。
☆
謁見の間にはエリアス国王がいた。
エリアス王の前に着くと、ファイエンは深々と一礼する。
フリードもファイエンに習い、一礼した。
「聞きたいことは沢山ある。余の問いに答えてくれぬか」
「はっ」
エリアス国王の問いにファイエンが返事をする。
「ここは僕が代わりに答えるね」
「……助かる」
ファイエンが小声でフリードに囁く。
国王とのやり取りに慣れているファイエンに任せれば間違いない。
フリードはファイエンに甘えることにした。
その後、エリアス国王とファイエンの会話が続く。
何故、ヴァルガンの船がエリアスに来なかったのか。
ヴァルガンの定期連絡が途絶えたのは何故か。
その二つの質問はファイエンがすらすら答えてくれた。
「最後の質問だが……、どうして連絡が取れぬ間に火の勇者が交代したのだ?」
「それは――」
火の勇者の話題になると、ファイエンの言葉が詰まる。
「僕よりも火の勇者の技を使いこなす者が現れたからです」
その一言を皮切りに、ファイエンはフリードとの一件をエリアス国王に簡潔に話す。
「――というわけで、僕は新たな火の勇者フリードをサポートするために同行しているのです」
「なるほど、余の質問は以上じゃ。答えてくれて感謝する」
「定期連絡が取れず、ヴァルガン王も大層心配しておりました。ご無事で何よりです」
「そ、そうだな」
「ところで……、テラヌート王子はいずこに?」
ファイエンがエリアス国王の息子、テラヌート王子について尋ねる。
(テラヌート王子は――)
テラヌート王子の名を口にすると、エリアス国王含め、王妃、大臣の表情が陰る。
きっと、フリードたちの背後にいる騎士たちも同様の表情を浮かべているだろう。
テラヌート王子は水の勇者。
フリードと同様に二年後に復活する魔王を倒す重い役目を背負っている。
この場にいないのは、ゲームをしていたフリードは知っていた。
「我が息子は、魔王の配下と名乗る輩との勝負に……、敗北した」
エリアス国王の息子、水の勇者であるテラヌート王子が魔王の配下との戦いに敗北したことを。
「……驚かぬのだな」
エリアス国王はフリードの反応を見て、そう呟く。
ファイエンはとても驚いているのに、フリードの反応が薄いと。
「俺たちはエリアスの国境を超えるとき、水の魔物の襲撃を受けていたので。その時からエリアス国内で悪いことが起きたのだと思っていましたから」
「ふむ」
船から襲撃を受けたからだと、フリードがそれらしい理由を述べるとエリアス国王は顎を撫で、納得した様子をみせる。
「水の勇者は魔王の配下の術により石像にされ、それはヤツが持ち去った」
「で、では……、テラヌート王子の安否は――」
「我が息子は……、死亡したと同然じゃ」
「そ、そんな」
エリアス国王の力ない言葉にファイエンはかける言葉を失う。
「エリアスは水の勇者を失った。我が軍が魔物たちを町へ入れぬよう防衛しておるが……、それが崩れるのも時間の問題じゃろう」
エリアス国王の表情が沈む。
「火の勇者フリード殿」
エリアス国王が玉座から立ち上がり、こちらへ歩み寄る。
フリードとファイエンの前に立ち、国王が二人に頭を低く下げた。
「頼む、そなたの力を貸してくれぬか」
一国の王が頭を下げた。
ゲームだったらここで【はい】【いいえ】の選択肢が出て、【はい】を選択しないと進まないようになっている。
意地悪なプレイヤーは【いいえ】を押し続け、エリアス国王の反応やファイエンのセリフを楽しむことができる。
エリアス国王が国民を守るためにフリードたちに懇願するという、己の立場を捨てた行動を目の当りにし、フリードは心を撃たれた。
「はい。俺の力でこの地にいる魔王の配下を討伐してみせましょう」
そして、迷わず魔王の配下を討伐することをエリアス国王に宣言した。
次話は12/9(火)7:00に投稿します!




