目覚めないティニア
「……ティニア?」
傍にいたシャーリィはうつ伏せに倒れたティニアに声をかける。
ティニアの返事はない。
起き上がる様子もない。
異変に気付いたシャーリィは、その場にしゃがみ、ティニアの身体を揺らす。
「ねえ、ティニア……。起きなさいよティニア!」
シャーリィはティニアの身体を押し、彼女を仰向けにする。
ティニアは目を閉じ、動かない。
胸が上下していることから息があることはわかる。
「シャーリィ、どうしたんだい?」
シャーリィの悲痛な声、船員たちが戸惑っているところでファイエンとフリードが駆けつける。
「ティニアが目を覚まさないの」
「魔力切れ――」
「あんなことであの子が魔力切れを起こすわけがない!!」
「シャーリィ、落ち着けって」
「落ち着いてられるわけないでしょ!」
ファイエンがティニアの魔力切れを指摘するも、シャーリィはすぐに否定する。
ティニアが倒れたことでシャーリィが激しく動揺している。
フリードは落ち着くようにとシャーリィをなだめるも、彼女はそれもはねつける。
「とりあえず、ティニアをベッドに寝かそう。それでいいか?」
フリードはティニアの身体を抱き上げる。
(柔らかいし、サラサラの髪に触れるといい匂いがする。女の子の匂いだ)
スマートな対応をしたフリードだったが、内心はティニアの柔らかい身体にプラチナブロンドの髪から甘い香りがして心臓がバクバクしていた。
ティニアの真っ白でもちもちな素肌に触れてみたいと欲がでてしまうほどに。
「絶対に落とさないでよ」
シャーリィに念を押され、ティニアを抱える腕が力む。
(ティニアってゆったりとしたローブを身に着けているからあれだけど、めっちゃスタイルいいんだよな)
ティニアを客船のベッドに運ぶ途中、フリードの視線はティニアの大きく膨らんだ胸元に向いていた。
客室に入ったフリードはティニアをベッドに寝かせる。
ティニアはベッドの上ですやすやと眠っている。
シャーリィは椅子をベッドの傍に置き、ティニアの手を握っていた。
いつも強気なシャーリィとは違い、ティニアの心配をしている。
「シャーリィ、ティニアは絶対に目覚める」
「どうして……、どうしてよ」
ファイエンはシャーリィの肩に手を置き、優しい言葉をかける。
その言葉でシャーリィの瞳からボロボロと涙が流れ、ティニアが目を覚まさないことに悲しんでいる。
(ティニアが目を覚まさないのは――)
ただ一人、フリードはティニアが目を覚まさない理由を知っている。
(ティニアはエリアスにとても縁があるキャラクターだから)
ティニアの故郷はエリアスであり、彼女はエリアスの重要人物と深い関係にあるから。
ゲームの通りであれば、ティニアはエリアスに到着するまで目覚めない。
船員によると、エリアスに上陸するのは三日後。
三日間、ティニアは目覚めない。
その間、シャーリィはティニアの心配をする。
(知っているのに、シャーリィに伝えられないのは……、辛い)
シャーリィが大泣きしている姿を見て、フリードは胸が締め付けられる。
だが、これはゲームの知識。
シャーリィに事実を教えるわけにはいかない。
フリードはエリアスに上陸する三日間、重苦しい空気に耐えた。
☆
三日後。
フリード一行を乗せた船がエリアスの港に着いた。
「あっ」
ティニアにつきっきりのシャーリィがはっとした表情を浮かべる。
ティニアの手がピクリと動き、目を開く。
海のような青い瞳がシャーリィをとらえる。
「ティニア! 目が覚めたのね!!」
ティニアが何度も瞬きをし、上体を起こしたところでシャーリィがぎゅっと抱きしめる。
「……」
ティニアは何が起きたか分からない、ぽかんとした表情でシャーリィを見つめていた。
「お姉さま」
「あんた、三日間眠ってたのよ!! 心配したんだから!」
シャーリィはティニアに不安な気持ちをぶつける。
「ご心配おかけして、ごめんなさい」
ティニアはよしよしとシャーリィの頭を優しく撫でた。
シャーリィは声をあげて大泣きしていた。
「どっちが姉なのか分かんねえな」
「そうだね」
フリードとファイエンは離れたところで、二人を見守る。
次話は11/25(火)7:00に投稿します!
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