8 空腹の間
「あっ...」
悠真から鳴り響く空腹の音に俺と颯太は目を見開いたまま一瞬にして悠真のほうを見る。
「お前今っ...」
「お腹が...!」
「音でっっっか...!?」
まずい...この音でバレたらひとたまりもないぞこれ...!
「今の音なに...?」
「どうしたの?」
まずいバレた...!腹減ってることはわかるけどめっちゃ突然!!仕方ないよな!?
「やばいやばいやばい...!」
「そんなに興奮しないでください先輩」
「いやお前が言うな!」
足音が段々近づいてくる。俺らは『もう無理だ』と思いながら顔を合わせる。でも何か忘れているような...?たしか悠真と合流するとき理科室に行ったけど...男子生徒が倒れていた...っけ...?
「ちょっと相談したいことがあるんだ悠真...!今さっき理科室に行ったとき倒れてる生徒いたか?」
「いなかったですけど...どうしました?」
どういうことだ...?いやおかしいよな...?今さっき確認しとけば...!もう一回理科室に行ったりできないか...?
「これ助かったら理科室もう一回行ってみないか?」
「助かったらな」
「あ、はい」
逃げてぇ...!帰りてぇ!なんでこうなったんだよ!誰だよこんな事した奴!!いや人工的でこうなったとはまだ決まってないけど...!
「やっぱ誰かいるの...?」
「気のせいって...言いようがないわね...」
足音がさらに近づいてますね!?何回来るんだよ!早く帰れー!!何回『足音近づいくる』って書かないといけないんだ!!!...ってまずいメタ発言が...!よし!祈る!
「よし...祈るわ。颯太よろ」
「神頼みかよ」
――バコンッ...!隣の個室の扉が爆ぜるように開く。まるで獲物の欲しさに飢えた虎が檻から飛び出すように――。
「うわ…!?」
俺はびっくりしてつい声を漏らしてしまうが、すぐに口を手で覆う。
「やっぱ気のせいですかね…?」
「そうかもねー?」
耐えた...のか...?まずい...この状況で『やったか...?』フラグは止めておいたほうがいいやつだ...!いやでもまじで居なくなったのか...?状況的に次ここ開けてくるだろ...!祈ってもやっぱ無理だなこれ。こうなったら...!
「しかたない...俺が引き付ける!」
「え!?でも玲央先輩は...!?」
「早まるなよ玲央!」
俺に小さく話しかける悠真と颯太を後にドアを開けて隣の個室の扉の前で話している奴らに向かって叫ぶ。
「こっちだ!きてみろ!」
「は~けっ~ん♡」
その言葉を後に俺はトイレから抜け出す。これで悠真と颯太を助けれたはずだ...!ていうか…髪型あのセミロングが優花でロングが千紘…あのポニテ真帆か…!俺の女子知識が高いことは置いといて…逃げる!
「せんぱ〜い!待ってくださ~い♡」
「うわ!なんか語尾にハートついてやがる!?」
俺は迷うことなく体育館から抜け出し、そのまま逃げ続ける。あいつらなんか腕黒くなってたな…?いや…とにかく逃げるしかない。頼むぞ…!颯太悠真!
「まじであいつ行ったの?」
「行ったと思う」
「でも、あいつのおかげでまぁ...助かったな」
あいつマジでどっかいったのか...。自分を犠牲にしなくてもよかったのにでしゃばりやがって...!
「そーた、一回トイレしたいから外で待ってて」
「おけ」
俺はトイレから出て、悠真を待つことにする。周りを見渡して暇をつぶしていた時だった。
「え?颯太?」
「は?なんでお前ここにいんの?」