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ベアトリーチェの推し活  作者: ねここ
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最終章 誰かのために

 「最近ベアトリーチェみないが。」メーベルトが言った。「たしかにいないな」テリウスも言った。「なんかいないと物足りなく感じるのは不思議だな」メーベルトはパーティ会場を眺めながらテリウスに言った。「友達の令嬢に聞くか?」テリウスはワイングラスをテーブルに置きあたりを見回した。「ああ、確か、、、あ、あの子だ」テリウスはビアンカを見つけ声をかけた。「最近ベアトリーチェを見ないが元気か?」「テ、テリウス様?ベアトリーチェ、、ウッ」ビアンカは突然テリウスに話しかけられて驚いていたがベアトリーチェという言葉を聞いて泣きはじめた。「な、なんだ?突然どうしたのだ?」テリウスは戸惑った。「も、申し訳ありません、、ベアトリーチェと聞いて、、ウッ、ヒック」そう言って泣き始めた。「何かあったのか?」テリウスはビアンカにハンカチを差し出し聞いた。ビアンカは頭を下げハンカチを受け取り目に当てて上を向いた。そして大きく息をはきテリウスを見て言った。

 

「ベアトリーチェは、ベアトリーチェは死にました。」

 

 テリウスは想像していなかった言葉に動転した。「な、なんと?」「ベアトリーチェは死んでしまいました。ウッウッ、、」ビアンカは泣き出した。「なにがあったのだ?!」テリウスは想像もしていなかった返答に思わず声を荒げた。メーベルトはテリウスの声を聞き何かがあったと察し飛んできた。「どうしたのだ?」メーベルトは絶句しているテリウスに向かって穏やかに話しかけ言った。

 

 テリウスはメーベルトを見つめ声を絞り出すように言った。「ベアトリーチェが、、死んだと、、」メーベルトは目を見開いた。「ベアトリーチェが?あんなに元気だったベアトリーチェが?何があったのだ?」メーベルトは信じられなかった。ビアンカは涙を拭い一息つき話し始めた。「陛下、ベアトリーチェはフィーレンのマクラーレンの娘です。ご存知かわかりませんが、あの家系は初代皇帝の頃から生贄の風習があるそうで、第二子に女の子が生まれたら帝国の安寧の為その子が十八歳の誕生日を迎えた日に、、命を捧げるそうです。ベアトリーチェは、、ベアトリーチェは誕生日に死にました。命を捧げる為だけに生きるベアトリーチェは、、限られた短い人生を自由に生きられたのです。だからここにきて推し活もして、、最近全然見ないから心配して連絡したら、、家族からそう言われました。」ビアンカはまた泣き崩れた。メーベルトはその言葉を聞き何も言わずに会場を出て行ってしまった。テリウスはメーベルトを追いかけて行った。

 


 ベアトリーチェには時間が無かった。

 とにかく大好きなメーベルト様に自分の存在を知ってもらいたかった。


 自分が生きた証といえば大袈裟かもしれないけれど、存在も知られずに死んでゆくことは耐えられそうになかった。未来のないベアトリーチェはどんな恥をかいても一年後にはこの世にいない。だからどんな手を使っても恥ずかしく無かった。

 思いの外横断幕と扇子はメーベルト様にウケ存在を私というちっぽけな存在を認識してくれた。それだけで幸せだった。だけど距離が近づくにつれどんどんと欲が出た。もっと知ってほしい、自分だけに微笑んでほしい。欲求は溢れてしまうのに、未来のない私は求めれば求めるほど残酷な現実を見なければならなかった。

 陛下、私はこの国の安寧のために死ぬんです。そう言って泣きたくなる数えきれない夜。死んじゃうからと言えば多少のわがままも聞いてくれるかもしれない。そんな邪な気持ちに何度心を囚われながらもギリギリのところで思うことはいつも同じ。同情のような感情は欲しくない。一生懸命に自分が掴んだものが欲しい。


 自暴自棄になりそうな夜も沢山あったがそんな夜を過ごすよりメーベルト様の幸せを願う時間が何よりも穏やかで優しい気持ちになれた。


 テリウス様がもっと欲を出したら?と言ってくれたが、欲を出しても未来のない私は何の欲が出せるのだろう。私がもってゆけるのは思い出だけだから、思い出が欲しかった。


 その願いを叶えてくれた日。メーベルト様は十秒も人生の貴重な時間をわたしだけを見つめて過ごしてくれた。その十秒は私にとって永遠に感じる十秒だった。メーベルト様の瞳に幸せな顔をした私が見えた。その私に向かって心の中で陛下が大好きですを何度も何度も言った。


 メーベルト様に会う人生最後の夜、奇跡が起こった。誕生日プレゼントにラストダンスを踊ってくれた。優しく触れるメーベルト様の手にすがりついて泣きそうになった。いや泣いていたけれど死にたくないと言って泣きたくなった。だけど生きていてもメーベルト様との未来がある訳ではない。だから今、ラストダンスを踊ってくれた今を持って死ねる事が本当に嬉しくて、でもこの先二度と会えない現実に胸が締め付けられるほど悲しかった。涙を流し踊る私に優しく微笑むメーベルト様。目を閉じるその瞬間まで忘れない。


 メーベルトはベアトリーチェの人生の全てだった。



 ベアトリーチェ。

 お前は高いところが苦手だと言ったのに、こんなに高いところから私の国の為に飛び降りたのか?

 怖かっただろ?

 

 私がいれば地獄だって行けるとお前は言ったけれど私はそんなこと望んでなかった。

いいかベアトリーチェ、皇帝はな、一人だけの為に泣けないんだ。国民の為に泣けても誰かのためだけには泣けないのが皇帝なんだ。

 お前は密度の濃い数ヶ月を私にくれた。必死に私を応援し、沢山の人を巻き込んで私にこの国の皇帝としての幸せを教えてくれた。

皇帝は孤独なんだ。

だけどその孤独は支えていてくれる者がいるからこそ感じることができると知った。

 

 ベアトリーチェ、お前は私に何も望まなかった。明るく笑い、思い出だけはもって死ねると言った言葉の意味、今更わかってももう、何もしてあげれない現実をなかなか受け入れられない。

 

 私はお前の事好きだった。その好きにどんな意味があるのかと聞かれたら簡単に意味を見出せないから好きなんじゃないかと思うんだ。お前は私に何も望まなかったが、お前は私の唯一を持って逝ったんだ。もう二度と誰かのためだけに泣けない。


 後にも先にも誰かの為に泣くのは


 ベアトリーチェ、


 唯一お前だけだ。


 メーベルトはベアトリーチェが飛び降りた海沿いの断崖絶壁に立ち一人涙を流した。

 テリウスは離れたところからメーベルトのことを見守っていた。明るく笑うベアトリーチェを思い出しながら。



 


 私が死ぬことで何かが変わるとは思えないけれどこの数ヶ月思うように生き切った。人生をかけた人から沢山の思い出をもらった。この綺麗なストールももらった。このストールを巻くとまるでメーベルト陛下に抱きしめられているような気分になる。短い人生だったけど、こんなに必死に人を愛せたこの人生は最高でした。こんなに高い所から飛び降りるのは怖い。怖いけど沢山の思い出とこのストールを持って、愛するあなたの幸せな未来を想って。


 メーベルト様あなたは私の全てでした。さよなら、、愛しています。ありがとう。


 

  メーベルトはマクラーレンのこの風習を禁止した。そんなことをしなくても良いほどの国を死んでいったベアトリーチェの為に作ると約束した。そしてメーベルトは一生をかけてその約束を守った。ベアトリーチェの亡くなった日を皇帝が国民に感謝する日として制定し毎年その日にはベアトリーチェが飛び降りた断崖絶壁で彼女のために、今までこの国の為に命を捧げた魂たちにメーベルトは祈りを捧げた。


 そしてその日の名称はベアトリーチェとした。

 メーベルトは一生涯ベアトリーチェの事を忘れることはなかった。


 あの明るく懸命に生きていた優しい少女。あの月夜に見たあの美しい涙を。

この作品は「百一年の孤独」という別の小説と繋がるお話として書きました。


よかったら読んで頂ければ嬉しいです。


ありがとうございました。ねここ

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