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ベアトリーチェの推し活  作者: ねここ
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なりふり構わず


「いやーあれ、本当やばかった!!」パーティが終わりテリウスは先ほどの事を思い出し笑いで涙をこぼした。「貴族のパーティー等いつも似たよったりである意味刺激がない。しかし今日は死ぬほど面白かった。」テリウスは涙を拭い話を続けた。

「しかし陛下はすごいな、あれ見ても和かに流せるなんておれ尊敬するわ」テリウスはメーベルトの肩を叩きながら笑った。「確かに、あれは面白かったな。あの子どこの貴族だ?見たことがない子だったな」メーベルトは執事に言った。「はあ、わかりませんが、恐らく平民に近い田舎の貴族だと思います。調べましょうか?」「いや、大丈夫だ」メーベルトはあの様子を思い出し笑いながら言った。「恐らくまた会えるだろう」


「今日はやったわ!!!」宿に帰ったベアトリーチェは女将さんや客の前で興奮し先ほどの奇跡を隈なく報告していた。「陛下が、陛下が私を見て手を、あの白魚のように美しい手を振って下さったのよ!!ああ、尊い。幸せ、最高」ベアトリーチェはメーベルトを思い出しながら言った。「ようやく私という存在を知ってもらったわ!」ベアトリーチェはガッツポーズをした。「あんたやるじゃない!」女将は喜ぶベアトリーチェを見てニヤリと笑いお祝いのワインを持って来た。「今日は飲もう!私のおごりだよ!」「おお!嬉しいなベアトリーチェと陛下に乾杯!」客も大喜びでその晩は皆で朝まで飲みまくった。


 翌日、ベアトリーチェは帝都新聞に目を通した。メーベルト陛下のスケジュールが掲載されているのだ。さて、スケジュールは「昼前に帝都にある大聖堂の修復工事を視察」と書いてある。ベアトリーチェは二日酔いだったが押し活に休みはない。今日も横断幕と扇子を持って出かけて行った。今日の推しアイテムは「麗しのメーベルト陛下・愛・ベアトリーチェ」と、「こっちを見てラブ陛下」と書いたものだ。現場はすでに人が集まっていたが最新兵器を持っているベアトリーチェは余裕だった。今日も手を振ってくれるかな。そう思いながら陛下の到着を待った。

 

 フローエンの紋章が入った馬車が到着しメーベルトが降りて来た。ベアトリーチェは早速例の横断幕と扇子を掲げて「陛下!!ラブ」と叫びながら陛下を見ていた。陛下はすぐにベアトリーチェに気がつき笑顔で手を振ってくれた。そしてなんと、カツラが飛ぶジェスチャーをしてベアトリーチェに微笑んだ!ベアトリーチェは興奮した。こんな幸せがこの世にあるのか?と思うほど幸せだった。陛下が覚えてくれていたのだ。「あああ、もう、この想いは止められないわ!!」ベアトリーチェはますますメーベルトにのめり込んでいった。


 最初はバカにしていたアイーダとビアンカも感心し始めた。「ベアトリーチェすごいわね!!あの陛下があんたの存在を認識するなんて驚いたわ!」「本当すごい、でもカテゴリーは面白い子とか、ヤバい子」アイーダとビアンカはそう言って笑った。「いえいえ、あなた達、なんでもいいのよ、知ってもらえたらヤバくても結構!!」ベアトリーチェは言った。それからもベアトリーチェは陛下が行くところ行く所に現れ完全にその存在を知ってもらった。それからは横断幕はやめ扇子のみを持ち歩き町でも城でも有名人になった。

 

「お,今日も推し活?」「頑張って!」と、どこに行っても声をかけてもらえるようになった。「ありがとう!!今日も推しの幸せ祈ります!」などと言って明るく笑うベアトリーチェは自他共に認める陛下推しの第一人者となった。


 メーベルトもあの子は押しは強いが害はないと認識し毎回見つけると手を振るようになった。その度にこれ以上ないくらいの笑顔を向け喜びを全身で表すベアトリーチェを認めるようになった。そしてある日のパーティーでメーベルトは初めてベアトリーチェに話しかけた。

 「ベアトリーチェ、いつも応援ありがとう」メーベルトがベアトリーチェに言った。「わ、わたくしめにもったいなきお言葉、きょ、恐悦至極でございます!」ベアトリーチェは緊張しそんな返事をしたのでメーベルトは笑ってしまった。それ以来メーベルトはベアトリーチェに声をかけるようになった。


 上位の姫や令嬢はベアトリーチェに対し論外、全く眼中になかった。ライバルとは違うカテゴリーの子と認識されておりその結果いじめられることもなく明るく推し活に努めていた。

「ベアトリーチェ、陛下に存在を認識してもらった今からはどうするの?」ビアンカが聞いた。「へ?どうするって?」ベアトリーチェが聞いた。「恋人になりたいとか、結婚したいとかって意味」アイーダは言った。「いやいやいや、ないでしょうそれ、相手にされるわけないってわかっているよ。それくらい。そうじゃなくてただただ陛下の幸せと笑顔を守るのよ。それがファンってものよ」ベアトリーチェは言った。「へー、ベアトリーチェって謙虚なのね」ビアンカは意外そうに言った。「謙虚?謙虚じゃないよ。そりゃ誰だって好かれたいし愛されたくない?でもさ、そんな事無理ってわかっているよ。だから応援してんの」ベアトリーチェが言った。「切ないねぇ」アイーダはため息をついた。「そう、その切なさすら尊いのよ」ベアトリーチェはそう言いながら笑った。


「最近あの子に声かけてるじゃない?」白魔法使いエーデルがメーベルトに言った。「ああ、ベアトリーチェ?あの子面白いんだよ」メーベルトは笑いながら答えた。「面白い?」黒魔法使いのロッシュが聞いた。「ああ、あの子話しかけると耳まで真っ赤になって、わたくしめにお声をおかけくださるとはもったいなき、とか言って面白いんだ。性格も明るいしね」メーベルトはベアトリーチェのマネをし笑った。「いいキャラだな。顔は可愛いが恋愛は出来ない系だ」テリウスが言った。「いい子だよ。ベアトリーチェは」メーベルトはそう言って笑った。


帝都が夕焼けに包まれる頃メーベルトとテリウスは変装をし城を出た。庶民の生活や、本音などを知るために時々こうして街に繰り出すのだ。そこで見聞きした事は国の方向を決める参考にしている。メーベルトとテリウスは夜の街に現れた。

「お、今日も行く?」街の男達が肩を組みながら楽しそうに話をしている。「いくいく、あの子面白いよな!」「めちゃくちゃな子だけど、話聞いてると元気になれるしさ、なんか俺も陛下推しになっちまって」「お、お前もか?俺もよ。今では女房も子供も陛下推しだぜ!」メーベルトとテリウスはその話を聞き、彼らについて行くことにした。「陛下なんかあの子いそうだな」「うむ、ベアトリーチェの気配を感じるなぁ」そう言いながら男達が入って行った宿の飲み屋に入った。

  


 

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