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第89話・憤怒の幼女悪魔

 聞こえてくる叫び声が徐々に少なくなっていくのを耳にしながら、フルレは急いでその声が聞こえてくる場所へ向かっていた。

 そしてその声がかなり近くに聞こえる場所までやって来たフルレが森の中へ視線を向けると、そこにはファジーロッパーたちを蹂躙じゅうりんむさぼり喰っている魔獣たちの姿があった。


「奴らは何なのだ!?」


 目の前の惨状を見たフルレが急速降下をして森の中へ下り立つと、ファジーロッパーたちを貪り喰っていた魔獣の群れは下り立ったフルレへ一斉に反応し、燃えるような真っ赤に光る目を向けた。

 そして下り立ったフルレが改めて周りに視線を向けると、食い荒らされた死体が魔獣の瘴気しょうきによる浸食の影響を受け、新たな魔獣となって動き始めていた。


「そちたち、フルレが連れて来たあやつも喰ったのだな?」


 ファジーロッパーたちの声がまったくしなくなった森の中、フルレは自分が拾い上げ連れて来たファジーロッパーが食べられてしまったのだと悟り、そのことに怒りをあらわにした。

 するとフルレは抑えていた魔力を更に解き放ち、丸く曲がった角と先の尖った尻尾を出すと、周りを囲む魔獣たちに鋭く刺さるような視線を向けて口を開いた。


「このフルーレ・フルレティを怒らせたことを恐怖と死をもって思い知るがいいのだっ! ダークネスショック!!」


 怒りをみなぎらせたフルレが自身を起点とした半球状範囲魔法を放つと、魔獣に変質しかけていたファジーロッパーやその死体、魔獣など、その周囲のもの全てを一瞬にして飲み込み、この世からその存在を跡形もなく消し去った。

 そして周囲に静けさが戻ったあと、フルレは吹き抜ける風を全身で受けながら、明るくなった周囲を少しだけ見渡し、そのあとで小さく顔を俯かせた。


「……リアたちの所へ戻らないといけないのだ」


 しばらくその場で立ち尽くしたあと、フルレは後ろ髪を引かれる思いを感じつつそう呟いた。


「キュウウ……」


 意を決して翼を広げ青く広がる空へ飛ぼうとしたその瞬間、酷い傷を負ったふさふさ毛のファジーロッパーが残った森の茂みからフラフラと姿を現し、その場にパタンと倒れた。するとその姿を見たフルレは急いでその場へ飛び向かい、重傷を負ったファジーロッパーを抱え上げた。


「生きておったのだな!」


 自身が拾い上げたファジーロッパーが生きていたことを喜んだのも束の間、負っていた傷が思ったよりも深く、抱き上げたその腕からファジーロッパーの血が大量に流れ落ち、刻一刻こくいっこくと命の灯火がついえる瞬間が近づいて来ていた。


 ――いったいどうすればいいのだ、このままではこやつが死んでしまうのだ。


 治癒魔法が使えないフルレにとってはこのままファジーロッパーを抱いて飛び、治癒魔法が使えるシャロやシエラの所へ行くというのが最善手ではあった。しかし魔界でもかなりの戦闘経験があるフルレには、シャロたちの所まで連れて行く余裕すらないことは既に分かっていた。


「覚えのある魔力を感じて見に来てみれば、こんな所で何やってんだ? シャロとシエラは一緒じゃないのか?」


 もはや打つ手立てがないと思っていたフルレの耳に聞き慣れた声が聞こえ、フルレは声がした方へと振り向いた。するとそこには辺りを見回すアースラの姿があった。

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