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第82話・三人仲良くお勉強

 猫飯亭で昼食を摂ったあと、シャロ、シエラ、フルレの三人はアースラと別れ、リーヤの中心街近くにある巨大図書館の前へやって来ていた。


「ここの図書館には初めて来たけど、本当におっきいね」

「そうですね、私は何度か来たことがありますけど、やっぱり大きいですよね」

「うん、面白そうな本が沢山ありそうだよ」

「シエラよ、ここはどのような場所なのだ?」

「えっとね、ここは沢山の本がある場所なの」

「ほー」


 魔界語でそう答えると、フルレは興味深そうに頷いて再び図書館を見上げた。


「人間たちの書物にどんな物があるのか楽しみなのだ、早く行ってみるのだ」

「あっ、ちょっと待ってフルレちゃん!」

「何なのだ?」

「えっとね、この中は静かにしてないと駄目な場所だから、騒いだりしないようにね?」

「分かったのだ、それじゃあ早く行くのだ」


 そう言うとフルレはシャロとシエラの手を握り、二人を引っ張りながら図書館の中へ入って行った。


「わー、ホントに本がいっぱい……これは目当ての本を探すのが大変そうだね」

「目当ての本があるなら司書の人に聞けば案内してくれますよ?」

「そっか、でも今日は何も聞かずに探検気分で色々と見て回ろっかな」

「それも楽しそうですね」

「うん、フルレちゃんは何か読みたい本はあるのかな?」

「こっちの言葉が分からぬと不便で仕方ないのだ、だからこっちで使える言葉が分かりやすく説明されている本が見たいのだ」

「そっか、それじゃあ分かり易そうな本を一緒に探そっか?」

「うむ、そうするのだ」

「シャロちゃんも一緒に分かりやすい魔界語の本を探す?」

「はい、お願いします」

「うん、それならみんなで一緒に探そう」

「はい」


 いつものように明るいシエラのあとに続き、シャロとフルレは目当ての本を一緒に探し回った。そしてそれぞれが目当ての本を見つけ出して手に取ると、三人は四階建て図書館の二階左隅にある長方形のテーブルまで移動をし、そこでシエラを真ん中に挟む形で座って勉強を始めた。


「シエラよ、この言葉は何と言うのだ?」

「ん? ああ、それはね、『ありがとう』って言うの」

「『あり、が、とう』これで良いのか?」

「うんうん、上手上手」

「当然なのだ、ところでこの言葉はどういう意味なのだ?」

「それはね、誰かに優しくしてもらった時なんかに使う感謝の言葉なの」

「優しくしてもらった時に使う言葉か……なるほど、魔界には無い考え方なのだ」

「そうなの?」

「魔界では受けた恩は借りとなるだけだから、いつか返せばいいだけなのだ、だから感謝の言葉とやらを使うことは無いのだ」

「そうなんだね、勉強になったよ、また分からないことがあったら遠慮なく聞いてね」

「うむ、シエラよ」

「何?」

「『あり、がとう』なのだ」


 この世界の言葉でお礼を言われて驚いたシエラだったが、すぐにいつものにこやかな笑顔を浮かべた。


「どういたしまして」

「よしっ、フルレはリアよりも先にこの世界の言語を修得して見せるのだ!」

「シエラさん、私を見て何か言ってますけど、何て言ってるんですか?」

「シャロちゃんよりも早く言葉を覚えてみせるんだって」

「そんなことを言ってるんですか? 私も負けてられません」


 フルレのあおりに負けず嫌いの火が点いたのか、シャロはさっきよりも気合の入った表情で魔界言語の本と翻訳本を見始めた。そしてこの日、三人は陽が沈む頃まで勉強を続けた。

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