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第81話・自由行動

 ストリクスが呼び出した大悪魔フルレティの一件が片付いてから5日が経ち、アースラたちはアストリアから円形城塞都市リーヤへと戻って来ていた。


「そういえば最近噂になってる話があるんだけどさ」

「それって魔王を倒した英雄が悪魔を追い払ったって話じゃないか?」

「知ってたのかよ、面白くねえな」

「その噂、町で結構広まってるからな」

「マジかよ」

「もしも噂が本当ならリーヤにも来てくれねえかな」

「それがさ、その英雄がリーヤに来てるって噂があるんだよ」

「マジか!? ちょっと捜してみよっかな」


 朝の修行を終えて猫飯亭で昼食を食べていたアースラたちの耳に、近くのテーブルで食事をしていた男たちの会話が聞こえてきていた。そしてシャロは男たちのそんな会話を聞きながら食事の手を動かし、テーブルの右斜め前に座っているアースラに視線を向けた。


「なんだシャロ、言いたいことがあるならさっさと言え」

「いえ、噂話って本当に尾鰭おひれが付くものなんだなってと思ったのと、噂の英雄と師匠ってどっちが強いのかなって考えてただけです」

「相変わらずくだらねえこと考えてんな」

「くだらなくなんてないですよ、師匠よりも強い人が居るか凄く興味がありますし。シエラさんは英雄と師匠、どっちが強いと思いますか?」

「私は英雄の方が今のベル君よりは強いと思うなあ」


 シエラはアースラをチラリと見ると、可愛らしい笑顔を浮かべながらちょっと意地悪にそんなことを言った。するとアースラは舌打ちをし、シエラの視線から目を逸らした。


「即答しましたけど、何か理由はあるんですか?」

「英雄は人知を超えた力を持つ魔王を激闘の末に倒したって伝わってるから、それなら最低でも今のベル君よりも強くないと駄目だろうなあって、単純にそう思っただけだよ」

「なるほど、私も機会があったら英雄に会ってみたいですね、師匠もそう思いませんか?」

「別に」

「ええー、何でですか? 魔王を倒した伝説の英雄ですよ、どんな人か興味ありませんか?」

「まったくないな」

「師匠の興味がどんなものに向くのかよく分かりませんね、シエラさんはどうですか?」

「私は興味あるかな」

「ですよね! 師匠、今度から仕事が無い時でいいですから英雄を捜してみませんか?」

「そんな面倒しいことするわけねえだろ、どうしても捜したいならお前らだけでやれ」


 いつものようにぶっきら棒にそう言うと食事をしていたフルレが手を止め、椅子から下りてアースラの方へやって来た。


「さっきから何の話をしておるのだ? フルレはこの世界の言葉が分からぬから、そちらだけで会話をされると嫌な気分になるのだ」

「シャロが英雄を捜して会いたいって言うから、俺は手伝わねえぞって言ってただけだ」

「ほー、それは面白そうなのだ、その英雄とやらを捜すのならフルレが手伝ってやってもよいのだ」

「良かったなシャロ、フルレが英雄を捜す手伝いをしてくれるらしいぞ」

「そうなんですか? でも言葉が分からないし……やっぱり師匠も一緒に――」

「俺はつき合わないって言ったろ、それにフルレとのやり取りが不安ならシャロも魔界語を覚えてみたらどうだ」

「私に覚えられますかね?」

「それはお前次第だろ、もしもその気があるなら図書館に行って勉強して来い、それくらいの時間は作ってやるから」

「私だけで大丈夫かなあ……」

「それならシャロちゃん、私と一緒に勉強する?」

「いいんですか?」

「もちろん、それに私も魔界語はそれなりに解るつもりだけど、フルレちゃんと話すためにちゃんと復習しておきたいからね」

「そういうことなら是非お願いします」

「だったら8日くらい修行は休みにしてやるから、その間で存分に勉強して来い」

「そんなにいいんですか?」

「知識を得るのは大事なことだ、得た知識がどこで役立つかは分からないからな」

「その間ベル君はどうするの?」

「俺は俺で自由にしてっから気にせず勉強して来い、その代わり基礎訓練だけはおこたるなよ」

「はい、ありがとうございます」


 こうして修行は8日間の休みに入り、それぞれの目的を果たすために自由行動を取ることになった。

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