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第80話・旅商人との別れ

 エミリーが倍化玉の代金千五百万グランを用意してアースラに支払った日の夜、アースラは一緒に行きたいと言うフルレを押し止め、一人で旅商人のマルロが寝泊まりをしている部屋へやって来ていた。


「へい、確かに倍化玉三つの代金千五百万グランを受け取りやした、今後とも御贔屓ごひいきにしていただければ幸いでやんす」

「ああ、マルロが仕入れた道具が凄いことは分かった、何かあればまた頼みたいところだが、その時はもっとオマケしてほしいもんだな、毎回こんな額の買い物をしてたら破産しちまう」

「へへっ、あっしはお客がその時に欲しい道具を売るのが商売でやんすから、値を吊り上げることはあっても、安くすることはないでやんす」

「いい性格してんな、まあその方が商人らしいとは思うけどな」

「お褒めにあずかり光栄でやんす。それとあっしは明日の朝には別の町へ商売に向かいやすから、旦那とはこれでお別れでやんす。もしもあっしに御用がある時はあっしが教えた目印がある店が色々な所にありやすから、そこであっしを呼び出してもらうといいでやんす」

「ああ分かった、それと一つ聞きたいことがあるんだが」

「何でやしょうか?」


 アースラは少し躊躇ためらう様子を見せたが、意を決したようにして口を開いた。


「死者を蘇らせることができる魔道具か魔法、もしくはそれが出来る方法の存在を知らないか? 有益な情報があるなら金も言い値で支払う」

「死者を蘇らせる方法でやんすか……これまでどれほどの人たちがそれを願い探し求めたのでやしょうかね、あっしも一時期はその方法を探して世界中を渡り歩いていたことがありやしたが、残念ながらあっしにはそれが可能な魔道具や魔法、方法を見つけ出すことはできやせんでした」

「そうか」


 やはりか――と言った感じの落胆した表情を浮かべ、アースラは小さな溜息を吐いた。


「旦那が死者を蘇らせる方法を探しているならあっしもお手伝いしやすよ、見つけられる保証は無いでやんすが」

「それは助かる、何か情報が入ったらよろしく頼む」

「分かりやした、では何かしらの有力な情報があればお伝え出来るようにするでやんす」

「分かった、それじゃあ俺はこれで」

「お気をつけてお帰りくださいやし」


 こうして倍化玉の代金を支払ったアースラはマルロの部屋を出て自分が寝泊まりをしている宿、シープドリームへ戻って行った。


「大切な人を救いたい、その思いが強ければ強いほど、それが叶わなかった時の絶望はより深くなるものでやんす。果たして旦那は行き着いた先で絶望に飲まれるのか、それとも違った答えを見つけ出すのか、どうなるでやんすかね……」


 アースラが出て行った扉の方を見ながら、マルロは珍しく他人の心配をして表情を曇らせていた。

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