第78話・幼女悪魔とお出掛け
魔界の大悪魔フルレティがアースラたちと行動を共にすると決まった翌日の昼前、アースラはフルレティと二人でアストリア城へと向かっていた。
「ベルよ、これからどこへ行くのだ?」
「この国の女王様に会いに行くんだよ」
「ほー、人間の女王とやらに会うのは初めてなのだ、楽しみなのだ」
「色々と物珍しいのは分かるが、迷子はにならないようにしてくれよ」
「フルレは幼い子供ではないのだ、だから迷子になどならないのだ」
――見た目はただの幼女なんだがな。
そうは言うものの、フルレは楽しそうにあちこちへ視線を向け、強く興味を引かれる物が目に映るとその度にそこへ向かうので、なかなかアストリア城へ辿り着けないでいた。
「フルレ、このままじゃいつまでも城に着かないだろうが」
「そんなことを言われても困るのだ、それもこれも人間が面白そうな物を出してるのが悪いのだ、だからフルレのせいではないのだ」
あくまでも自分のせいではないと言い張るフルレに対して業を煮やしたアースラはやや体勢を低くし、フルレがちょろちょろできないようにその左手を握って進み始めた。
「急にどうしたのだ?」
「このままじゃいつまで経っても城に着かん、しばらくはこうさせてもらう」
「ベルは大胆なのだな、まあ嫌いではないが」
フルレは手を引かれながら微笑み、大人しく歩き始めた。こうしてようやく大人しくなったフルレと共にアストリア城へ辿り着いたアースラは、しばらく客室で待ったあとでエミリーの部屋へと通された。
「ここがベルの言っていた女王の部屋なのか?」
「ああ、これからその女王様が来るから大人しくしといてくれよ」
「うむ」
部屋へ通されてからしばらく待っていると、エミリーが静かに部屋へ入って来た。
「待たせてごめんねアースラ」
「いや、俺も突然来たわけだし仕方ないさ、女王の仕事が忙しいんだろ」
「ええ、多種族国家ともなると色々やることが多くてね、ところで今日はどうしたの?」
「依頼の件が片づいたから報告に来たんだよ」
「えっ、頼んでからまだ1日しか経ってないのに!?」
「この件に関しては俺も予想外の展開が多かったが、とにかくフルレティの件は解決したんだよ」
「あなたがそう言うなら解決したんでしょうけど、いったいどうやったの? やっぱりフルレティを倒したの?」
「いや、話し合いをしたら俺たちについて来ることになった」
「えっ、どういうこと?」
「だから話し合いをしたら俺たちの仲間になるって展開になっちまったんだよ、ちなみにここに居るのがエミリーの言ってたフルレティだ」
「この可愛らしい子が!?」
――まあこんな見た目じゃその反応が普通だよな。
「しゃあないな、フルレ、そこの女王様に悪魔の姿を見せてやってくれ」
「正体を見せてはいけないのではなかったのか?」
「今だけは特別だ」
「そうか、分かったのだ」
アースラの言葉に頷くとフルレは抑えていた魔力を強め、悪魔の象徴たる角と黒い翼、鋭く尖った尻尾を出した。




