第77話・幼女悪魔とお約束
シャロとシエラの意見が一致したことに深い溜息を吐いたアースラは、椅子から立ち上がってフルレティへ近づいて行った。
「どうしたのだ?」
「とりあえずそこの二人はフルレが同行することに了承した」
「うむ、当然なのだ」
「だが俺はフルレを連れて行くことには不安がある」
「何が不安なのだ?」
「フルレの住む魔界がどうかは知らんが、こっちは狡猾で嫌な奴らも多い、だがそれ以上に優しい奴もいい奴も居る、だからフルレがそんな奴らに迷惑をかけないか心配なんだよ」
「フルレはそんなことはしないのだ」
「そうは言うが、フルレは古代王国を氷漬けにして滅ぼしたと伝わってるぞ」
「あれは下らない目的のために人間共がフルレを呼び出したから、その愚かさを分からせてやっただけなのだ」
「本当にやったのかよ……だがまあ、だからって国ごと滅ぼさなくてもいいんじゃないか」
「それは大きな誤解なのだ、フルレは呼び出した連中を氷漬けにしてやっただけで、他には何もしていないのだ。だから国を滅ぼしてなどいないのだ」
「それが事実かどうかは確認のしようもないが、俺たちと一緒に行動をしたいならいくつか約束をしてもらいたい」
「どんな約束なのだ?」
「まず一つ目は、フルレや俺たちが面倒事に巻き込まれないために自分が悪魔だと言わないことと、その正体を見せないことだ。二つ目は、フルレの持つ力を無闇に使わないこと、フルレの力は強過ぎるから無差別に傷つける行動は絶対に禁止だ。三つ目は、ここに居る三人が駄目だと言うことは絶対にしないこと。最後はこっちで過ごす上で色々と支障が出るから、多少なりこっちの言語を覚えてもらいたいということだ。この条件が飲めるなら俺はフルレがついて来るのを認める、どうだ?」
「その条件を飲まなければ、ベルたちと美味しい物を食べたり遊んだりできないのか? それは困るのだ」
「いや、食べ物はともかくとして俺は遊ばねえぞ」
「よし、決めたのだ、フルレはその条件を飲むのだっ」
アースラの言葉など聞いていない様子のフルレは勢い良くベッドの上で立ち上がり、元気良く両手を上げて答えた。
「分かった、だが約束した以上はちゃんと守ってくれよ」
「もちろんなのだ、フルレの言葉に偽りなどないのだ」
「あと言っておくが、俺はフルレと遊んだりしないから、遊びたいならそっちの二人に遊んでもらってくれ」
「フルレはベルとも遊びたいのだ」
「残念だがそれは諦めてくれ、じゃなきゃ連れて行かねえぞ」
「それは卑怯なのだっ」
こうしてアースラたちに魔界の大悪魔、フルレティが仲間として加わった。




