第75話・予想外の結末
可愛らしい幼女の姿をした悪魔、フルレティの脅しによってアストリアへ戻って来たアースラたちは、ウーマを返した足ですぐに猫飯亭へと向かった。
「ここが人間共の食事をする場所なのか? 凄く騒がしいのだ」
いつもどおりの喧騒に包まれた猫飯亭へ入ったフルレティは、その目を輝かせながら周りを見渡した。
「ほら、どこでもいいから空いてる席に座ってくれ」
「分かったのだ」
サッと周囲の状況を見渡したフルレティは、黒髪のツインテールを揺らしながら軽い足取りで空いている席へと向かって行く。
「シエラさん、師匠たちはどんな話をしてるんですか?」
「私もそんなに詳しく分かるわけじゃないけど、フルレティちゃんが『ここが人間たちが食事をする場所か? 騒がしいな』みたいなことを言って、ベル君が『とりあえず空いてる席に着いてくれ』みたいなことを言ってたよ」
「悪魔相手でも物怖じしないとか、師匠って本当に凄いですね」
「そうだね、さすがに私もそう思うよ」
「お前らも早く来い」
「は、はい!」
フルレティに続いて席に座ったアースラは、コソコソと話をしている二人に声を掛けつつ、メニュー表をフルレティへ差し出した。
「これは何なのだ?」
「これはメニュー表、そこに書かれている中から食いたい物や飲みたい物を選んで注文をするんだ」
「ふむ、なるほど、だがフルレには何と書いてあるのか分からないのだ」
「やっぱそっか、そんじゃまあ、とりあえず俺が適当に頼んでいいか?」
「うむ、飛びっきり美味しい料理を所望するのだ」
「はいよ」
こうして全員が席に着いたあとで注文をし、続々と注文した品が来る中で四人の食事は始まった。
「これは何という食べ物なのだ?」
「それはスクローファって動物の肉を焼いたものだ」
「ほう、スクローファとな、どれどれ――うむ、芳醇な香りの肉にサッパリとしたピリ辛の味つけがされたソース、これはとても美味しいのだっ!」
初めて食べたスクローファのステーキに感動したフルレティは、続けて他の料理にも手を伸ばした。
「うむっ、これも美味なのだっ!」
こうしてフルレティは運ばれて来た料理の全てに手をつけ、その数々に惜しみない称賛の言葉を送った。
「――ふうっ、お腹いっぱいなのだ」
「満足したみたいだな」
「うむ、フルレは久々に満足しているのだ」
「それじゃあこれで魔界に帰ってもらえるな」
「フルレは魔界には帰らないのだ」
「ちょっと待て、それじゃあ約束と違うじゃねえか」
「フルレは美味しい物を食べたら帰るのを考えてもいいと言っただけのだ、だから約束は破ってないのだ」
「そんなの屁理屈じゃねえか」
「フルレは人間共の料理がとても気に入ったのだ、だからそちたちと一緒にこの世界の美味しい物を食べ尽くすまでは魔界に帰らないのだ」
「おいおい、マジで勘弁してくれよ」
「フルレはもう決めたのだ、だから諦めるのだ」
こうしてこちらの世界の料理に心奪われたフルレティは、強引にアースラたちと行動を共にすることを決めた。




