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第71話・旅商人の商魂

 旅商人のマルロについて行くことしばらく、アースラは人気のない裏道にある商店に入ったマルロに続きその中へと入った。


「おっ、マルロじゃねえか、久しぶりだな! って、客を連れてるってことは俺に顔を見せに来たわけじゃなさそうだな」

「久しぶりでやんすカルロ、ちょいと商売の話をするんで部屋を借りるでやんすよ」

「相変わらず商売熱心だな、いいぜ、地下の部屋を使いな」

「感謝するでやんす」


 カウンターの右隅にある床の扉を開くと、マルロは素早く階段を下りて行った。


「さあ、兄さんも早く行きな」

「ああ」


 カルロの言葉に頭を縦に振ると、アースラもマルロに続いて地下への階段を下りて行った。

 アースラが入った地下室は店の大きさよりも広く、中には様々な武具や見たこともない道具が沢山あり、マルロはその部屋にある古く大きな木製テーブルの上にリュックの中身を広げ始めていた。


「さあ、これがあっしが用意した数々の逸品でやんす、遠慮なくお手に取ってご覧いただきたいでやんす」


 リュックの中身をテーブルの上に並べ終わったマルロは、自信満々の様子で商品へ向けて両手を広げた。するとアースラはテーブルの上に置かれた数々の道具に目を配り、その中から片手で握り込めるほどの大きさの、七色の光を返すカッティングが施された球状に近い形の魔力水晶を手に取った。


「やたらと強い魔力を感じるが、これはどんな道具なんだ?」

「それに目をつけるとはお目が高いでやんすね、それは特別な手法で作られた魔法玉で、倍化玉というものでやんす」

「バイカダマ?」

他所よその道具屋で売られている魔法玉は魔法を詰め込んで敵に投げつけ、詰め込んだ魔法とほぼ変わらない威力や効果を出すことができる優れた道具でやんすが、込めた魔法が時間経過によって劣化していくという欠点がありやす。しかしこの倍化玉はその欠点を改良し、詰め込んだ魔法が劣化することがない上に、特殊な加工が施された魔力水晶が詰め込まれた魔法の威力を倍に高めてくれるという、非常に優れた一品なんでやんす」


 ――この話が本当だとしたら、フルレティの結界を消し去るのに使えるな。


「この倍化玉の値段は?」

「これはあっしが持つ商品の中でも特に値が張る一品でやんすから、一つ五百万グランと言ったところでやんす」

「マジかよ、これ一つで特級鍛冶師が作った武具が一式買えるじゃねぇか。まあこの道具の効果が本当にアンタの言ったとおりだとしたら、それくらいの価値はあるかもしれんが」

「もちろんあっしの話に嘘はないでやんすよ」

「だが今の俺にこの道具の本当の効果を知る術はないだろ?」

「なるほど、確かにおっしゃるとおりでやんす。では旦那がこの道具を使い、あっしの言ったとおりの効果が発揮されたらお代をいただく――ということでいかがでやしょうか」

「それだとそっちのリスクが高くないか? 俺がこの品を持って逃げるかもしれないし、使っても代金を支払わずにとんずらするかもしれないぞ?」

「もちろんそのあたりのリスクは承知しておりやす、ですが商売において信用と信頼を得ることは最も重要な要素でやんす。なのでまずはあっしから旦那を信じることで、旦那からの信用と信頼を得ようと思っているでやんす」

「だがそれだけじゃ俺を信用しようとする理由には足りない気がするな」

「手厳しいでやんすね、まあ率直に言わせてもらうなら、旦那はこれからもあっしの良客になってくれそうな大金の匂いがプンプンするんでやんすよ」

「商人の勘てやつか?」

「そんなところでやんすね」

「なるほど、その理由はまだ納得できるな、それじゃあアンタの言葉に甘えてこの倍化玉は借りて行くぞ」

「分かりやした、その道具を使っての吉報きっぽう、お待ちしているでやんす」


 こうして旅商人のマルロから倍化玉を三つ借り受けたアースラは、急いで店を出て町の外へと向かった。

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