第67話・氷結の悪魔を捜して
二人と別れてアストリア帝国を出たアースラは、門番をしている兵士に聞いた情報をもとに町で借りたウーマに乗って北へ向かっていた。
「門番の話だとこっちで間違いないはずだが、フルレティどころかモンスターも見当たらねえな」
得た情報をもとにフルレティを捜して荒野を彷徨っていたアースラだったが、未だにフルレティどころか、凍てつかされた土地すら見つけられていない状況だった。
――アストリアからもだいぶ離れちまったし、このあたりで進むか戻るかの判断をしないとな。
この先の進退をどうするか決めようとしていたアースラは、止めたウーマの上で両腕を組んで唸り始めた。
しかし戻ったところで有益な情報が得られるとも限らないことは分かっていたので、とりあえず先へ進もうかと考え始めていたが、先に進むにしても明確な当てがあるわけでもなく、アースラにしては珍しく長考していた。
「……これ以上迷っててもしゃあねえ、とりあえずもう少し進んでみっか」
最終的にフルレティの捜索を続行すると決めたアースラは、再び手綱を持ってウーマを走らせ始めた。
そしてウーマを走らせて荒野を巡ることしばらく、アースラは遠くにキラキラと太陽の光を反射して煌めいている何かを見つけた。
「これはフルレティが通った跡か? こりゃあ圧巻だな、何もかもが氷漬けになってやがる」
アースラがキラキラと煌めく場所へ行くと、そこには氷漬けになったモンスターがオブジェのように多数あり、凍りついた大地には大人の拳ほどの大きさの雹が天を目指すようにうず高く積み重なっていた。
「問題はフルレティがどっちに進んで行ったかだな」
ウーマから降りたアースラは氷の道の左右を何度か見ながら状況観察を始めた。
――普通なら氷の溶け具合で進路を判断できるが、どこを見ても溶けかけてる様子すらねえな、それだけフルレティの魔力が強いってわけか。だが残っている魔力の具合を見ると、進路はあっちだな。
凍りついた道の左側を見たアースラは素早くウーマに乗って手綱を持ち、急いで凍りついた道の脇を進み始めた。
そして凍りついた道に積み重なる雹の山と、氷の彫像と化した多数のモンスターを見ながら移動を続けると、アースラはキラキラと太陽の光を返す縦に長い三角柱をした氷結結界があるのを発見した。
「すげえな、あんな規模の氷結結界なんて見たことねえぞ」
アースラが目にした氷結結界はそこそこの大きさの村でも余裕で飲み込んでしまいそうなほど大きく、結界内は凄まじい吹雪と雹が嵐のように渦巻いて白く染まり、外から中の様子を窺い知ることが出来ない状態だった。
――さてと、氷結の悪魔様はこの中だろうが、どうやったら謁見できるかね。エミリーなら手紙でも出せば可能だが、氷結の悪魔様は手紙なんて受け取ってくれそうもないしな。
三角柱の氷結結界をかなり遠巻きに一周し、そのヤバさを感じ取っていたアースラだったが、とりあえず何もしないわけにはいかないとウーマから降り立ち、ゆっくりと結界の方へ進み始めた。
しかし氷結結界はその外側にも強い影響を及ぼしていて、アースラは結界へ近づく毎にその影響を肌で感じ取っていた。




