第62話・アストリアの女王様
アストリア帝国へ来た翌日の昼前、三人は昨晩の功績を称えたいという女王の呼び出しを受けてお城へと向かっていた。
「ったく、城に行くだけでどうしてそんなに着飾る必要があるんだ?」
お城へ向かう最中、アースラはめかし込んだ二人を見て呆れ気味にそんなことを言った。
「だって女王様に会うんだよ、いつもの恰好で行けるわけないじゃない」
「そうですよ、むしろ師匠はいつも通り過ぎて不安なくらいです」
「アストリアの女王はそんなこと気にしたりしねえから、普通の恰好で充分なんだよ」
「師匠、頼みますから女王様の前では口の利き方に気をつけてくださいね?」
「本当だよ、ベル君のせいで牢獄に入れられるなんて嫌だからね」
「わーってるよ、俺だってそれくらいのことは弁えてるってんだ」
「本当に大丈夫かなあ」
「俺の心配なんてしなくていいから、お前らは二人で服の乱れの確認でもしてろ」
「そうだね、シャロちゃん、お城へ着く前にもう一度服装の確認をしておこうよ」
「そうですね」
――アイツらマジで確認を始めやがったよ。
「先に行くぞ」
「あっ、待ってよベル君!」
「置いてかないでくださいよ師匠ー!」
こうして三人はアストリア城へ赴き、女王の間へと通された。
「やっぱり緊張しますね」
「そうだね、女王様と謁見なんて普通はできないもんね」
女王の間へ通されてすぐ、シャロとシエラはあまりの場違い感に顔を引きつらせながら、アースラを間に挟んでコソコソと会話を交わしていた。
「お前ら緊張しすぎだっての」
「緊張して当たり前じゃないですか、むしろ師匠が緊張してないことの方が驚きですよ」
「別に緊張する必要はねえだろ、女王に会うだけだし」
「今だけはベル君の図太さを分けてほしいよ」
小さくそんな会話を交わしていると、赤絨毯の左右に並んでいる兵士の一人がビシッと背筋を伸ばし、クイッと顎を上げた。
「間もなくアストリア帝国第二十四代女王、ヴェルヘルミナ・エミリー・アストリア様が参られる! 皆の者、片膝を着き頭を垂れ女王を出迎えよ!」
背筋を伸ばした兵士が声高にそう言うと、シャロとシエラ以外の者が床に膝を着いて頭を垂れた。
「えっ、えっ!?」
「ベ、ベル君!?」
「お前らも周りと同じようにすればいいんだよ」
慌てふためく二人にそう言うと、シャロとシエラは急いでアースラと同じ体勢をとった。
そして全員が同じ体勢をとってしばらくすると、綺麗な白のシルクドレスを纏った、長い金髪の美しい女王が玉座の後ろにある部屋から現れ、優雅に歩いて玉座へと腰を下ろした。




