表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/145

第60話・新たな依頼

 魔王崇拝者集団ストリクスとの一件があってから10日後の深夜、アースラは猫飯亭にある特別な個室へ出向き、そこで裏の仕事の見分役を務めているジードと話を始めようとしていた。


「今日はいったい何の用だ?」

「お前ストリクスの奴と揉めたんだってな」

「依頼の成り行き上そうなっただけだよ」

「ある程度の経緯いきさつは聞いてるが、面倒な奴らと関わっちまったな」

「んなことはどうでもいいから、さっさと本題を話せ」

「分かったよ、今回お前を呼んだのはヴェルヘルミナ様から手紙を預かったからだ」


 ジードはふところから赤いろうで押し封がされた白い封書を取り出し、それをアースラに差し出した。そしてジードが差し出した封書を受け取ったアースラは、封を丁寧に解いてその中にある手紙を開き見た。


「――エミリーの奴、俺に依頼があるから会いに来てほしいって書いてるが、どんな面倒しい依頼をするつもりだ?」

「そう嫌そうな顔をするなアースラ、ヴェルヘルミナ様の協力があるからこそ、俺たちクロノワールは円滑に動くことができるんだぞ」

「わーってるよ、何にしてもエミリーとの約束もあるし、行くしかねえな、アストリア帝国に」


 こうしてアースラはアストリア領である円形城塞都市リーヤから遠く西、ヴェルヘルミナ・エミリー・アストリアが治める女王君主国、アストリア帝国へ向かうことになった。


× × × ×


 手紙を受け取ってから4日後の夕刻、アストリア帝国へ向かうキャラバン隊の護衛を務めるという名目で足を用意したアースラは、シャロとシエラを伴ってアストリア帝国の検問所近くまでやって来ていた。


「そんじゃ兄ちゃん、護衛ありがとな」

「ああ、縁があったらまたどうぞ」

「分かったよ、それじゃあなっ」


 キャラバン隊のウーマ車から降り立ったアースラは隊長に挨拶をし、荷車用の検問所へ向かって行く隊を見送った。


「ここがエオスでもっとも多種族が住んでいるって有名なアストリア帝国ですか」

「私もしばらくここで活動してたけど、本当に大きいところだよね」

「アストリアはエオスでも類を見ない規模の多種族国家だからな。さあ、とりあえず検問を通って中へ入るぞ」


 アースラは検問の列に並び、シャロとシエラもそれに続いて後ろに並んだ。


「師匠、入国したらすぐ依頼人に会いに行くんですか?」

「いや、今日は先に宿を探して、依頼人に会うのは明日にする」

「ねえベル君、そろそろ依頼人がどんな人か教えてよ」

「それは会えば分かるって言ったろ」

「そうだけど、でもそんなに秘密にされると気になるじゃない、ねっ、ちょっとだけでいいから教えてよ」

「私も気になるから教えてほしいです」

「ったく、めちゃくちゃ偉い人だよ」

「めちゃくちゃ偉い人ですか? シエラさん、どんな人だと思います?」

「そうだなあ……アストリアに住む有名貴族とかかな? シャロちゃんはどう思う?」

「そうですね、師匠がめちゃくちゃ偉いって言ってるくらいですから、もしかしたらアストリアの女王様とかだったりして」


 ――コイツ、本当にこういう勘は鋭いな。


「面白い予想だとは思うけど、いくらなんでもそれはないと思うなあ」

「ですよね、うちの意地悪師匠が女王様と知り合いなんて、分不相応にも程がありますからね」

「おいシャロ、分不相応ってのは分かるが、本人の前で意地悪師匠ってのを堂々と言える勇気はどこから出て来るんだ」

「あっ、それはその……」

「よしよし、それじゃあ次の修行は思いっきり厳しくしてやろう、お前の成長のためにな」

「そ、そんなー! 勘弁してくださいよ師匠!」

「うるせえ、一度言った言葉を簡単に取り消せると思うなよ、今回は諦めてしごかれろ」

「謝ります! 謝りますから本当に勘弁してください!」


 そこからシャロの必死の謝罪が続くこと約1時間、アースラたちはようやく検問所を抜け、アストリア帝国内へと入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ