第57話・待ち人来りて
永劫の氷花を採取し終えたアースラとシャロが、もう少しでリーヤへ到着しようかという頃、辺りは夜の帳に包まれ始めていた。
「遅いですね、アースラさんとシャロさん、何かあったんでしょうか?」
「永劫の氷花は凄く採取が難しいって言ってたから、ちょっと時間がかかってるのかも」
孤児院の子供たちとメグルに食事を摂ってもらったあと、カリン以外の子供たちはアースラたちが寝泊まりをしている宿、シープドリームで一時的に預かってもらい、シエラとカリンは教会の出入口前にある階段に座って二人の帰りを今か今かと待っていた。
「あっ、シエラさーん! カリンさーん! お待たせしましたー!」
二人が教会の前で心配そうにアースラたちの帰りを待っていると、手を振りながら走って来るシャロの姿が見え、シエラとカリンは素早く立ち上がってシャロの方へ走り始めた。
「待ってたよシャロちゃん!」
「シャロさんお帰りなさい!」
「お待たせしてごめんなさい、目当ての永劫の氷花を見つけるのに時間がかかってしまって。メグルさんは大丈夫ですか?」
「今のところは大丈夫だけど、ベル君は一緒じゃないの?」
「師匠は採取した永劫の氷花を薬にすると言って薬屋へ向かいました。薬の完成には少し時間がかかると言っていたので、その間はみんなのことを頼むと言われました」
「そっか、もう少し時間がかかるんだね。とりあえず疲れただろうから、中に入って体を休めて」
「はい、そうさせてもらいます」
こうして永久氷山から戻ったシャロを教会に迎え入れ、カリンたちはアースラが薬を持って戻って来るのを待った。そしてアースラが戻って来るのを待つこと三時間、そろそろ空に浮かぶ満月が真上に来ようとしていた。
「師匠、まだですか……」
メグルにかけられた呪いの発動が迫る中、焦りだけが募るシャロは1分1秒でも早くアースラが戻って来ることを願いつつ、教会の外で待っていた。
そして呪いの発動が迫るにつれ今までとは違った苦しみを見せ始めたメグルのために、カリンはその側について手を握りながら無事を祈り、シエラはその苦しみを少しでも和らげようと治癒魔法を使っていた。
こうして呪いの発動が刻一刻と迫る中、シャロの目に凄い速さで走って来るアースラの姿が映った。
「師匠!」
「メグルの様子はどうだ?」
「1時間くらい前から凄く苦しんでます」
「分かった、とりあえずすぐに薬を飲ませよう」
そう言って教会の中へ入ろうとした瞬間、アースラはピタッと足を止め、左側にある建物の残骸へと視線を向けた。
「師匠! 急がないとメグルさんが!」
「シャロ、このポーションを持ってメグルの所へ行け、そして数回に分けて中身を少しずつ飲ませろ」
アースラは暗がりの方を見つめたまま視線を外さず、持っていた特製ポーションをシャロへ差し出した。
「師匠はどうするんですか?」
「俺のことはいいから早く行け! 時間がねえんだよ!」
「は、はいっ!」
慌ててアースラから特製ポーションを受け取ったシャロは、そのまま急いでメグルが居る部屋へ走って行った。




