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第56話・憧れの気持ち

 アースラとシャロが永劫えいごう氷花ひょうかを採取するために永久氷山を登っている頃、孤児院に残ったシエラはカリンと一緒に夕食の準備を始めようとしていた。


「食材を買って来てもらった上に手伝いまでしてもらってごめんなさい、シエラさん」

「そんなこと気にしなくていいから、美味しい食事を作ってみんなを喜ばせようよ」


 シエラは申し訳なさそうにしているカリンの背中をポンポンと叩き、にっこりと笑顔を見せた。


「シエラさんは優しいですね、それに治癒魔法も使えるし、明るくて美人だし、凄く憧れちゃいます」

「憧れるなんて生まれて初めて言われたよ、ありがとね、カリンちゃん」


 シエラははにかんだ表情を見せるカリンの頭を優しく撫でた。


「い、いえ、私こそありがとうございます」


 憧れのシエラに頭を撫でられたカリンはとても嬉しそうに微笑んだが、そのあとでスッとその笑顔が消えた。


「……シエラさん、どうしてお姉ちゃんは呪いをかけられたんでしょうか?」

「時間がなかったから詳しい話は聞けなかったけど、メグルちゃんにかけられた呪いは純粋な心を持つ人の魂を奪い取るための呪いらしいから、それで狙われたんだと思う」

「確かにお姉ちゃんは凄く純粋で優しいけど、どうしてこんな目に遭わなくちゃいけないんでしょうか、お姉ちゃんは私たちのために一生懸命頑張ってくれてただけなのに……」


 カリンは悲しげな表情でそう言うと、その瞳に涙を浮かべた。


「大丈夫だよカリンちゃん、メグルちゃんは絶対に助かるから」

「本当ですか?」

「もちろん、だってベル君が助けるって言ったんだもん、だから絶対に助かる!」

「シエラさんはアースラさんのことを凄く信頼してるんですね」

「うん、だってベル君は小さな頃に命懸けで私を助けてくれた人で、私が強くなろうと思った切っ掛けをくれた人だから。だから信じてる、ベル君のことを」

「もしかしてシエラさん、アースラさんのことが好きなんですか?」

「えっ!?」


 カリンのそんな言葉を聞いたシエラは驚きと同時に顔を赤く染めた。


「違いましたか?」

「……ううん、正解、でもベル君には内緒だよ?」

「どうして内緒にするんですか? シエラさんに好きって言われたらアースラさん絶対に嬉しいと思いますけど」

「ありがとう、でもねカリンちゃん、ベル君の心の中には大切で特別な人が居るの」

「だから気持ちを伝えないんですか?」

「今はまだね、でもいつか絶対に伝えるよ、だからその時までは内緒にしておくの、だからカリンちゃんも内緒にしてね」

「分かりました、絶対内緒にします。それと私、シエラさんのことを応援します、だから頑張ってください」

「うん、ありがとね。さあ、頑張って美味しい料理を作ろう!」

「はいっ! でもちょっと食材が多過ぎませんか?」

「えっ!? そんなに多いかな?」

「私たちはお金がないから沢山買えないだけですけど、それでもこの量は多い気がします。もしかしてですけど、スラム街の外に住んでる人たちってみんなこんなに食べてるんですか?」

「えーっと、それはね……そ、そう! これはベル君が沢山食べるからこれくらいの量が必要なんだよ」

「アースラさんてこんなに食べるんですか? 凄いですね」

「う、うん、凄いよね、でもほら、男の子って沢山食べるのが普通だから」


 その言葉を疑うことなく信じたカリンに対し、シエラはちょっと申し訳なさそうな表情を浮かべてそう答えた。


「それじゃあアースラさんのためにも、美味しい料理を作らないといけませんね」

「そ、そうだね、それじゃあさっそく作ろっか」

「はい!」


 こうしてシエラとカリンの沢山の食材を使った料理が始まり、その料理作りは太陽が赤く染まり始める頃までかかった。

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