第52話・永久氷山へ
アースラの話が終わったあと、三人は宿へ戻って準備を済ませて教会へ向かい、そこで今回の件についての真相をメグルとカリンの二人だけに話した。そして呪いをかけた者が行動を起こした時のためにシエラを残したアースラは、シャロと共に急いで永久氷山へと向かった。
「――これが永久の氷でできた永久氷山ですか、初めて来ましたけど噂通りキラキラしてて凄く綺麗ですね」
「最近は永久の氷って呼び名はあまり聞かなくなったが、ここは様々な魔力水晶が取れる貴重な資源の山だ」
「魔法士の私たちには馴染み深い物ですからね、魔力水晶は」
「そうだな、さて、悠長に見惚れている暇はない、先を急ぐぞ」
「はいっ!」
シャロが気合の入った返事をすると、二人は永久氷山の頂上を目指し始めた。
「シャロ、ここへ来るまでにも説明したが、この山に居る魔晶ゴーレムには絶対に魔法攻撃をするなよ」
「魔晶ゴーレムは強い魔力を帯びている魔力水晶で出来ているから、魔法攻撃がほとんど通じないんですよね」
「ああ、それにこっちの魔力を吸収されたりすると面倒だしな。ってことで、魔晶ゴーレムと遭遇して戦う時はこの槍を使って攻撃をしろ」
そういうとアースラは手に持っていた槍をシャロに手渡した。
「師匠、どうして使う武器が槍なんですか? 打撃系武器の方が良さそうに感じますけど」
「水晶ってのは純度にもよるが、強い圧力をかけると放電するんだ、それは町で売られている水晶も同じだが、魔力水晶はその中でも飛び抜けて純度が高い上に強い魔力を内包しているから、下手に強い圧力が加わるような攻撃を仕掛けると、それが元で強力な雷撃魔法を使われたのと同じようなダメージを受けることになる。魔晶ゴーレム自体の能力は大したことはないが、打撃系武器を使わない理由はそれだ。次に槍を使う理由だが、水晶も他の宝石や鉱石類と同様にちょっとした傷に弱い、だから槍による刺突攻撃で傷を入れ、そこから一気に破壊するんだ」
「そんな理由があったんですね」
アースラの説明を聞いたシャロは、右手に持っている槍の先端を見ながら何度か頭を頷かせた。そして永劫の氷花を求めて山頂を目指していた二人は、山の中腹で三体の魔晶ゴーレムと遭遇してしまった。
「できれば遭遇せずに永劫の氷花を採取したかったが、そう甘くはないか。仕方ない、シャロは右の一番小さい奴の相手をしろ、残り二体は俺が始末する」
「分かりました」
指示を受けたシャロはすぐにその身を一番小さなゴーレムへ向け、鋭く尖った槍を構えた。




