第51話・原因の解明
メグルに聞いたスラム街の中心部へとやって来たアースラは、目的である朽ちた大きな館へ視線を向けていた。
「思ってた以上に荒れてんな」
「こんな所へ何を確かめに来たんですか?」
「メグルが手伝ったって儀式が何かを確かめておきたくてな」
シャロの質問に答えるとアースラは朽ちた館の壁に空いた穴へ向かい、そこから中へ入って魔法陣が描かれた部屋を探し始めた。
「配置的にこの辺りの部屋が怪しいんだがな」
「ベル君この部屋みたいだよ!」
三人で手分けをして魔法陣が描かれた部屋を探していると、アースラの二つ先の部屋を見ていたシエラが声を上げた。
「なるほど、やっぱりそういうことか」
シエラが見ていた部屋の中へ入ったアースラは、そこにある掠れた魔法陣を見て自分の考えに確信を持った。
「師匠、そういうことって何ですか?」
「メグルが弱る原因になったのは病気じゃない、呪いだ」
「の、呪い!? どういうことですか?」
「どうもこうも、灰色ローブの集団はメグルを騙して呪いの儀式をやったってことだ。まあ神へ捧げる祈りってのはあながち間違いでもないが、その捧げ物が自分自身のことだとは思わなかっただろうな」
床に描かれた魔法陣を改めて見渡しながらそう言うと、アースラは苦々しい表情を浮かべた。
「なるほど、どうして私の治癒魔法が効いてないんだろうって思ってたけど、呪いの影響で治癒魔法を受けつけなくなってたんだね」
「そういうことだ」
「でもどうしてベル君はメグルちゃんが呪いを受けてるって分かったの?」
「以前に同じような呪いを受けた奴を見たことがあってな、それでもしかしたらと思ったんだよ」
「もしかして、私に治癒魔法を使わせたのもそれを確かめるため?」
「まあな」
「師匠、その呪いを解く方法はあるんですか?」
「呪いはその種類や効果によっては解呪が難しくなるが、この呪いなら何とかなる」
「本当ですか」
「ああ、一番簡単なのはこの呪いを発動させた術者を締め上げることだが、術者が誰か分からない以上、それは難しいだろうな。かと言って無理に解呪を試みれば、体力や精力が失われている今のメグルは耐え切れずに死んでしまう可能性がある」
「だったらどうすればいいんですか?」
有効的な解決策が見えないアースラの言葉に対し、シャロはとても不安そうな表情を見せた。
「とりあえず時間もないから、予定通りに永劫の氷花採取に向かう」
「呪いに永劫の氷花が効くんですか?」
「永劫の氷花で呪いは解けんが、メグルは呪いによる影響で病気も併発しているから、体力や精力を回復させるための手段としては有効的だ。呪いを受けた状態じゃ治癒魔法をまともに受けつけんからな」
「なるほど」
「それとシエラには別の役割を任せたいんたが大丈夫か?」
「もちろんだよ、何でも言って」
「よし、それじゃあこれからの行動を話すから、あとは俺の言ったことに従って行動をしてくれ」
「分かりました」
「了解」
こうしてメグルが弱っている原因を突き止めたアースラは、二人に今回の依頼を達成するための作戦を話し始めた。




