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第48話・便利屋として

 カリンの依頼を引き受けることを決めたアースラは、宿へ戻ってスヤスヤと眠っている二人に向かって声を上げた。


「起きろっ!」

「ふあぁぁぁ~、こんな朝早くにどうしたんですかぁ?」


 最初に目を覚ましたのは寝起きの良いシャロだったが、シエラはそんな声など聞こえていない様子でスヤスヤと眠りの世界に留まっていた。


「コイツは相変わらず起きねえな、シャロ、シエラを起こして準備をしたらすぐに猫飯亭へ来い」

「どうしたんですか突然」

「いいからさっさとシエラを起こして支度しろ、俺は先に猫飯亭へ行く」


 右手で寝ぼけまなこを擦っているシャロにそう言うと、アースラは猫飯亭へ向かった。


× × × ×


「ハァハァ、あっ! アースラさん、遅くなってごめんなさい!」

「いや、気にしなくていい。それよりもずいぶん汗をかいてるな、何か飲むか?」

「あ、いえ、私にはこんな所で何かを飲む余裕はないので」

「心配すんな、金なら俺が出す」

「でも……」

「子供が遠慮なんてすんな、ほれっ、この中から好きな物を選べ」

「は、はい、分かりました」


 カリンは申し訳なさそうに答えると、恐る恐ると言った感じでアースラからメニュー表を受け取り品物の名前を見始めた。しかしメニューを見始めたカリンの表情はどんどん困り顔になり、仕舞いにはしょんぼりとした表情でメニュー表をテーブルに置いた。


「決まったのか?」

「いえ、その……あまり字が読めないので、何が何だかよく分からなくて」

「そうか、それじゃあ俺の決めた飲み物でいいか?」

「はい、お願いします」


 こうしてアースラは二人分の飲み物を注文し、丸型テーブルの対面にある椅子にカリンを座らせた。


「もう少ししたら俺の連れが来るから、そいつらが来たら依頼の話を始めることにする」

「お連れの方って、昨日一緒に居た美人のお姉さんですか?」

「ああ、それとあともう一人、カリンと同じくらいの年頃の奴が来る」

「あの子もアースラさんのお仲間なんですか?」

「小生意気な俺の弟子だよ」

「誰が小生意気な弟子ですか?」


 カリンの質問に答えると、その後ろからシャロの不満そうな声が聞こえ、シャロはアースラの右斜め前の椅子に、シエラはシャロの対面の椅子に座った。


「俺の弟子は世界に一人しか居ないと思うが?」

「相変わらず意地悪な言い方をするね、ベル君は」

「まったくです――って、あなたは昨日の!?」

「は、初めまして、私はカリンと言います」

「初めまして、私はヒストリア・シャーロットと言います」

「私はシエラ・リース・クロエ、よろしくねカリンちゃん」

「はい、よろしくお願いします」

「でも、どうしてカリンさんが師匠と一緒に?」

「俺がカリンの依頼を受けることにしたからだよ」

「えっ!? 昨日は仕事を受けるつもりはないとか言ってたのに」


 アースラの言葉に驚いた表情を見せたあと、シャロは続けて釈然としないと言った感じの声を上げた。


「俺はあの時『冒険者としてならその依頼を受けるつもりはない』って言っただろ。てことは、便利屋としてなら依頼を受けるってことだ」

「それならそうと言ってくださいよ、もう少し話を聞くのが遅かったら私一人でも依頼を受けようと思ってたんですから」

「それくらい俺の弟子なら気づけ、てかお前、そんなこと考えてたのか?」

「当たり前じゃないですか、師匠の言ってたことは分かりますけど、だからって困ってる人を放っておけませんから」

「お前のそういう所は大事にしていいと思うが、今回の件に関しては行動を起こす前で良かったよ」

「シエラさんが止めてなかったらとっくに依頼を受けてましたよ」

「直情的なシャロにしてはよく我慢できたなと思ったが、今回はシエラのお手柄ってことか」

「ベル君ならきっと何か手を考えてるって思ったからだよ」

「さすがシエラだな、どこかの短慮たんりょなお子様にも見習ってもらいたいもんだよ」

「うぐっ」

「ベル君、シャロちゃんをイジメちゃ駄目だよ」

「へいへい、それじゃあお前たちも飲み物を頼め、それが来たら仕事の話を始めっから」


 こうして全員が注文した品が来たあと、四人は仕事の話を開始した。

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