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第19話・戦闘開始

 シャロはポックル平原近くにある森の周辺を歩きながら、かつてないほど緊張していた。それは初めて一人で仕事をやるという重圧もあったが、最大の理由は敵についての詳細に不明瞭ふめいりょうな部分が多いことが大きかった。

 今のシャロにとってゴブリンを相手にすることに実力的な不足はなく、それは例えゴブリンが五十匹以上居たとしても問題ではない。しかし前任者三人が殺されているという話を聞けば、それなりに緊張と警戒をするのが普通だろう。


 ――駆け出しの二人が数に押されて殺されたのは分からないでもないけど、やっぱりベテランがゴブリン相手にやられた理由がに落ちないなあ。


 基本的にゴブリンは身体能力が高い亜人くらいには強いが、知性はかなり低いので扱いの難しい武器は使えない。故にゴブリンのほとんどは打撃武器か素手による接近戦が主体となるが、そんな欠点を補って余りある数で襲って来るので、戦う力やすべを持たない者にとっては凄まじい脅威となる。

 もちろん数の脅威は戦う力を持つ者も同じではあるが、広い範囲と殲滅力せんめつりょくのある魔法を使う魔法士マジックエンチャンターや多数相手の戦いに長けた熟練の者なら、数の多さはさほど問題ではない相手だ。


「こういうの心臓に悪いなあ」


 緊張で激しく鼓動する胸の音を感じながら進んでいると、右側にある森の前後の茂みからガサガサと音がし、そこから一斉にゴブリンの群れが姿を現した。


「挟まれた!?」


 状況を見たシャロは相手を視界にとらえたまま瞬時に空いている左側へ全力で走り、ある程度の距離を稼いだところで敵を見据えて身構えた。


 ――敵の中にマジックエンチャンターが居ない、どこかに隠れてるのかな。


 シャロを挟み込む形で現れたゴブリンたちは、武器を構えながら不気味な笑みを浮かべて前進を始めた。そんな状況を見て激しく緊張していたシャロだったが、いつもより広範囲に視線を飛ばしながら周囲を警戒し、範囲魔法のための魔力を両手に集め始めた。


「ファイアストーム!」


 収束された魔力により威力を増した炎が群れ全体を一瞬の内に包み込むと、燃え上がる炎の音と共にゴブリンたちの叫び声が幾重いくえにも平原に響いた。すると炎の中で激しく藻掻もがく黒い影がいくつも見え、次々と地面に倒れ始めた。

 そしてシャロはゴブリンが焼ける嫌な臭いに顔をしかめつつ、生き残りや伏兵が居ることを前提に次の魔法を放つ準備を済ませていた。


 ――さあ、来るなら来いっ!


 シャロは燃え上がる炎や周囲に視線を送りながら生き残りや伏兵、そして何より姿の見えなかったマジックエンチャンターが出て来ると警戒し身構えていたが、いつまで経ってもそんな奴が現れる様子はなく、ある程度炎が小さくなった時には一匹として立っているゴブリンの姿はなかった。


「これで終わり?」


 とりあえず襲い掛かって来たゴブリンを殲滅せんめつできたが、拍子抜けするくらいにあっさりと終わったことにシャロは唖然としていた。

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