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第17話・初めての一人仕事

 冒険者組合の仕事を受けた日の夜、二人はいつもより早くベッドに入って就寝しようとしていた。


「師匠、ちょっと聞いてもいいですか?」

「何だ」

「どうして私に今回の仕事をさせようと思ったんですか?」

「お前は冒険者組合と便利屋、どちらも単独で仕事を受けて戦ったことはないからだ」

「それは分かりますけど、いくらなんでもゴブリン相手に負けることはないと思いますよ?」

「大した自信じゃないか、だが複数で戦うのと単独で戦うのは勝手が違う、それに今回は俺も居ないわけだし、ゴブリン相手でも予想外の苦戦をするかもしれんぞ?」

「なるほど、それはそうかもですかね」

「大きな力も知恵や物量の前に敗れることもある、よく覚えておけ。それといつもは第1から第3序列魔法のどれかを使えと制限しているが、明日は使える魔法は状況に応じてなんでも使え」

「いいんですか?」

「当たり前だ、前に説明したが、いつもお前に序列の低い魔法を使わせてるのは、使い勝手や連発をしやすいとか、魔力操作に慣れさせるためにやらせてるだけだ。それに俺が近くに居る時ならともかく、駆け出しのお前が一人で戦う時に制限をかける意味はない、むしろそんな舐めたことをしてたら死ぬのはお前だ」

「分かりました、明日は頑張ります」

「おう、きっちり仕事をこなして来い」

「はい、分かりました、おやすみなさい」


 こうして二人はしばしの眠りにつき、疲れを癒した。


× × × ×


 翌日の朝、人の姿がまばらな冒険者組合の建物内に準備を整えたシャロの姿があった。


「おはようございます、ガリアさん」

「よう嬢ちゃん、待ってたぜ、コイツは見分役のラニーだ、戦いはからっきしだが逃げ足は組合でも指折りの奴だ」

「もう、変な紹介をしないでくださいよガリア」

「よろしくお願いします、ラニーさん。私はヒストリア・シャーロットと言います、シャロって呼んでください」

「はい、よろしくお願いしますね、シャロさん」


 ガリアに紹介された茶髪でショートカットのスレンダーな女性は、シャロに向けて右手を差し出した。するとシャロはその右手を優しく握り、軽く上下に振った。


「よろしくお願いします。それではガリアさん、仕事に行って来ますね」

「えっ!? あ、ああ、気をつけてな嬢ちゃん」

「はい、ありがとうございます」


 困惑の表情を見せるガリアをよそに、シャロは見分役のラニーを連れて建物外へ出た。するとそこにはアースラが居て、仕事へ向かおうとしていたシャロに歩み寄って来た。


「あれっ、師匠どうかしたんですか?」

「お前に渡し忘れた物があってな」


 アースラは腰の両サイドにつけていたポーション入れを外し、それをシャロに手渡した。


「これを私に?」

「ああ、それに俺が渡しておいたポーションを入れて、いつでも使えるようにしておけ」

「分かりました」

「いいかシャロ、例え相手が格下だったとしても油断するな、単独の時はいつも以上に視野を広げろ、相手の不自然な動き、行動、言葉、全てに気を払え、いいな」

「はい」

「よしっ、それじゃあ行って来い」

「はいっ! 行って来ます!」


 こうしてシャロは見分役のラニーを連れ、目的のポックル平原へ向かい始めた。


「さてと、どうなるかな」


 張り切った様子で町の外へ向かって行くシャロの後ろ姿を見ながら、アースラは渋い表情を浮かべていた。

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