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第14話・知ってほしくない世界

 盗賊団を壊滅させてから7日後の昼、アースラとシャロは行きつけの猫飯亭リーヤ店で朝食事を摂っていた。


「そういえば師匠、さっき冒険者組合の近くで聞いたんですが、アストリア領内を荒らし回っていた盗賊団が急に姿を見せなくなったらしいですよ」

「そうか」

「以前から悪さをしていた集団が忽然こつぜんと消えることがありましたけど、いったい何があったんでしょうかね?」

「さあな、誰かに壊滅させられたんじゃねえのか」

「でもその盗賊団、かなりの手練てだれが揃ってるって聞きましたし、それを誰にも知られずに壊滅させるなんて現実的に無理だと思うんですよね」

「無理かどうかなんてそんなのは誰にも分らんだろ、どちらにしても盗賊団は消えてその被害もなくなったんだ、それでいいじゃねえか」

「それはそうですけど、噂では悪党を始末する謎の組織が存在するって話も聞きますし、ちょっと気になりませんか?」

「お前にそんなことを気にしてる余裕があるのか? そんな余裕があるならもっと強くなることに考えを回せ」

「うっ、ちょっと世間話をしてるだけなんですから別にいいじゃないですか、これでも頑張ってるんですよ私は」


 不満そうな表情を見せると、シャロは黙々と食事を再開した。


 ――いつかは俺が裏の仕事をしてる話をする日が来るかもしれんが、できればそんな日が来ないことを願いたいもんだ。


 裏の仕事に関わればそれだけ恨みを買ってしまう可能性が高まり、より危険な仕事をすることにもなる。それは裏に関わっているアースラが一番よく分かっているから、できればそんな世界に関わらせたくないと、シャロに裏の仕事の話はしていなかった。


 ――目指す終着点は一緒でも、コイツには俺と違った形で戦ってほしいからな。


「……シャロ、今でも強くなりたい気持ちは変わらないか?」

「急にどうしたんですか?」

「いいから答えろ」

「もちろん強くなりたいです、この世界から少しでも多くの理不尽をなくし、私みたいな目に遭う人が少しでも減るようにしたいですから」


 そう答えたシャロの目は真剣そのもので、それはアースラに弟子入りを頼んだあの日と何も変わることのない、強い意思と決意を感じさせた。


「よし、じゃあ飯を食い終わったあとの修行はいつもの三倍厳しく行くぞ」

「えっ!? ど、どうしてですか?」

「お前が強くなりたいって言ったからだよ」

「確かに強くなりたいですけど、師匠の修行は通常でも死にそうなくらいキツイんですから、その三倍なんて確実に死んじゃいますよ」

「そこは俺が死ぬか生きるかのギリギリを見定めてやるから心配しなくていいぞ」

「頼みますから本当に勘弁してください! お願いします!」

「そんな弱気発言は受けつけん、諦めろ、それが分かったらさっさと飯を食え、とっとと修行に行くぞ」

「そんなあー!」


 シャロの目的と意思がしっかりしていることが嬉しかったアースラは上機嫌な様子で目の前の食事を平らげ始め、シャロは引きった表情を浮かべていた。

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