第144話・思わぬ再会
いかつい男の嘘を見事に見抜いたアースラは、建物内に居る傭兵たちに目を向けながらカウンターに居る女性の方へ向かった。
「さっきのやり取り見てたけど、あのマークの売り込みをよくかわせたわね、いったい何をしたの?」
「あの手の嘘つきには効きやすいハッタリをかましただけだ。それよりも上級相当の実力がある奴が三人必要なんだが、そんな奴は居ないか?」
「斡旋する立場でこう言うのもなんだけど、民間傭兵の実力は自己申告制だから、登録されているランクが正確とは限らないわよ、それでもいいの?」
「それは知ってる、だからアンタの見立てでいいから上級相当の奴が居たら教えてくれ」
「そうねえ、上級相当の実力を持つ人なんて滅多に居ないし、居たとしても色々ワケありだろうけど……アイツなら実力的には大丈夫かな」
「アイツ?」
「ちょーっと難ありの人だけど、それでもいいなら紹介するわ」
「その辺は俺が判断するから教えてくれ」
「分かったわ、それじゃあ」
女性は右手の平を上に向け、アースラにスッと差し出した。
「……いくら欲しいんだ?」
「そうね、あなた私の好みだから特別に二千グランでいいわよ」
「そりゃあどうも」
その言葉に表情一つ変えず、アースラは託された資金から二千グランを取り出し手渡した。
「思ったよりも素っ気ないわね、まあいいわ、ここを出て右に真っ直ぐ進んで行くとバンシーって酒場があるから、そこのマスターにリアムって人のことを聞いてみて」
「リアム? 分かった、行ってみる」
「ええ、何かあればまた来てね」
情報を得たアースラは建物をあとにし、情報どおりにバンシーという酒場へ向かい始めた。
× × × ×
目当ての酒場へ辿り着いたアースラは早速その薄暗い店内へと足を踏み入れ、カウンターに居るマスターらしき女性のもとへ向かった。
「アンタがここのマスターか?」
「そうよ」
「ちょっと聞きたいことがあるんだが」
「いいわよ、何が聞きたいのかしら?」
「ここにリアムって奴が居ると聞いてきたんだが、どこに居る?」
「アンタあの飲んだくれに何の用があるの? 面倒事なら外でやってほしいんだけど」
「面倒事を起こす気はないから安心してくれ」
「ふーん、まあいいわ、リアムなら店の端の席で飲んだくれてるわよ、ほら、あっちの端に居るスキンヘッドの大男がそうよ」
「助かった、あとで何か注文させてもらう」
「ええ、待ってるわ」
アースラはカウンターを離れ、マスターが教えてくれたリアムのもとへ向かった。
「ううっ、ターニャよぉ~、俺の何が悪かったってんだぁ~」
「まさかとは思ったが、お前がこんな所で飲んだくれてるとはな、その様子じゃまた女にフラれたのか?」
「はあっ!?」
リアムは眉間に皺を寄せながらアースラの方へ視線を向けると、据わった目を大きく見開いた。
「あれからだいぶ経つってのに、相変わらずみたいだな」
「お、お前もしかしてアースラか!?」
「久しぶりだな、最後に会ったのは7年くらい前か」
「てめえっ! いったいどこに雲隠れしてやがった!」
「お、おいっ!」
リアムは血相を変えると素早く立ち上がり、アースラに迫って胸ぐらを掴んだ。
「な、何だいきなり!?」
「うるうせえ! ここであったが100年目ってやつだ!」
偶然にも昔馴染みのリアムと出会ったアースラだったが、出会った途端に修羅場が始まってしまった。




