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第142話・現実問題

 闇夜の荒野で八回目になるモンスターの襲撃を受けていたアースラは、村で借りたウーマから降りて淡い月の光が照らす中で戦いを繰り広げていた。


「ギガライトネス」


 アースラの放った光の線撃が体を貫くと、モンスターは鋭く短い絶叫を上げ地面に倒れた。


「これで最後みたいだな」


 倒したモンスターの群れを見て周囲を見渡したあと、アースラは再びウーマにまたがり目的地であるラスティアへと進み始めた。


「それにしても、魔王が居た時からある程度モンスターは居たが、当時よりも本当に多くなったな」


 アースラの言うように、魔王が居た頃からモンスターに襲われることはそれなりにあったが、それでも今ほど頻繁に遭遇し襲われることはなかった。

 しかし魔王を倒して以降は世界各所の治安も徐々に乱れ始め、モンスターによる被害も目に見えて増えているのは誰の目にも明らかだった。


 ――これも魔王が居なくなった影響だってのか?


 魔王を倒してから失った多くのものを考えると、アースラの心は決して穏やかではなかった。


「早く傭兵を雇って村に戻らんとな、さっさとシャロも見つけないと何が起こるか分からん上に、ストリクスの動向も気になるしな」


 このあともアースラはモンスターの妨害に遭い続けたが、なんとか夜が明ける直前には目的の町であるラスティアへと辿り着いた。


 ――敵が大したことなくても、数で迫られるとさすがにうざったいな。


 辿り着いた町の入口でそんなことを思いながらウーマから降りると、アースラは近くにある乗用動物の貸屋にウーマを預け、そのまま町の冒険者組合へ向かった。


「傭兵級種書を見せてもらえないか?」

「級種のご指定はございますか?」

「中級から上級までのを見せてくれ」

「ではこちらをご覧ください、目的の級種で振り分けておりますので」

「助かる」


 受付で級種書を受け取ると近くのテーブルへ移動し、そこでしばらく椅子に座って級種書に目を通した。


 ――上級の奴はほぼ問題なさそうな感じだが、中級の傭兵じゃ力不足感は否めないな。


 エオスの冒険者ギルドは冒険者とは他に傭兵の管理も行っている。

 傭兵の役割は主に村や町などの長期防衛だが、登録されている傭兵は実力によって下級、中級、上級、最上級、特別級と区別されているが、同じ級でもそれなりに実力差は出てしまう。

 そしてそんな級種書を見ることしばらく、アースラは口元に手を当てて悩み始めた。村長から頼まれた上級の傭兵を三人雇うとなると、どうしても金額が足りないからだ。


 ――ここへ来るまでに戦ったモンスターの強さを考えると上級三人ってのは妥当な数だが、どう考えても上級を雇うのは二人が限界だな。


 三人雇うのが難しいなら二人にすればいいと思われるだろうが、二人でも平気な強さの傭兵を雇おうとすれば、当然のように依頼料も跳ね上がる、それがアースラを悩ませていた。

 村の防衛に必要な人材とそれを雇うだけのお金の釣り合いが取れない以上、今のアースラに出来ることはそう多くはなかったからだ。


「……ふうっ、気は進まないが仕方ないか」


 アースラは辟易へきえきとした感じで溜息を吐くと、持っていた級種書を受付に返し、そのまま冒険者ギルドをあとにした。

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