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第139話・手掛かり

 アースラたちのもとを離れたシャロを追っていた三人は、その途中でフルレが見つけた村へ向かって進んでいたが、近づいた村の様子を見たアースラとシエラはその様子を見て表情を曇らせた。


「ベル君、これって」

「ああ、これはモンスターに襲われたわけじゃないな、恐らく野盗にでも襲われたんだろう、酷いもんだ」

「どうするつもりなのだ? 村へ入るのか?」

「ここまで来て様子も見らずに離れるのも気になるしな」

「だね、でも村の人たちはまだ気が立ってるかもしれないから十分気をつけないと」

「そうだな、そんじゃ行くか」


 アースラは先頭に立って歩を進め、未だ物が焼けた臭気が立ち込める村の中へと入って行った。


「だ、誰だお前たちは!!」


 村の中心へ向かっていると、焼け落ちた家の物陰から鋭く先の尖った二つの股がある農具を持った男が現れ、体と声を震わせながらその鋭く尖った先をアースラたちに向けてきた。


「落ち着いて下さい、私たちは冒険者で水や食料を分けてもらえないかと立ち寄っただけです」

「そうなのだ」

「冒険者だと?」


 シエラの言葉を聞いた男は一瞬その表情を緩ませたように見えたが、すぐにその表情を引き締め直し、農具を持つ手に力を込めた。


「その言葉を信じろってのか?」

「信用できないならどうする、その手に持っている物で俺たちを殺すのか? お前がそのつもりならそれでもいいが、俺は誰だろうと降りかかる火の粉は払いのける。そのつもりなら覚悟を決めた上でやるんだな」

「うぐっ……」


 誰だろうと降りかかる火の粉は払いのける――その言葉の意味が分からないはずもなく、男は怯んだ様子で農具を下ろした。


「ベル君、そんな言い方をしたら怖がらせちゃうでしょ! ごめんなさい、こんな言い方してますけどあなたのことを思って言ってるだけですから」


 シエラの言葉に多少なり冷静さを取り戻したのか、男はいきり上げていた両肩を小さく落とし、申し訳なさそうな表情を浮かべた。


「あ、いや、こちらこそすまない、昨日野盗に襲われたから気が立ってたんだ」

「村の様子を見てそうかもと思ってましたが、やっぱりそうだったんですか」

「ああ、ここ最近は小さな村や町は野盗に襲われることが多いらしいが、ここもついに野盗の集団に襲われたんだ」

「村の人たちは無事だったんですか?」

「村で雇っていた傭兵たちが頑張ってはくれたが、その傭兵たちのほとんどと、村人の何人かは殺されてしまったよ、その中には俺の家族も居たんだ……」


 男は持っていた農具を地面へ思いっきり突き刺し、大粒の涙を地面へ零した。


「話を聞く限りじゃ相当質の悪そうな連中だったみたいだが、その野盗たちは最終的に誰が追い払ったんだ? 生き残った傭兵か?」

「それが、急に村の中に黒い霧が立ち込めて、しばらくしてその霧が晴れた時には、襲撃して来た野盗たちが死んでたんだ」

「黒い霧?」

「ああ、突然その黒い霧が村全体を覆ったかと思うと、あちこちから叫び声が聞こえてきたんだ」


 ――村を覆うほどの黒い霧――てことは、誰かが第6序列魔法のダークミストを使った可能性が高いな。


「野盗たちをったのは誰か分からないのか?」

「俺が見たわけじゃないが、村に居るキースって子供が化け物を見たって話は聞いたよ」

「化け物? それはどんな奴なんだ?」

「頭に黒い角が二本ある化け物で、そいつが野盗たちを殺してたって聞いたぜ。それにしても、頭に二本の角なんて、まるで10年前に居た魔族みたいだよな」

「……悪いがそのキースに会わせてもらえないか? ちょっと話を聞いてみたいんだ」

「別にいいけどよ、どうしてそんな話を聞きたいんだ?」

「色々と事情があってな、頼む」

「分かったよ、それじゃあついて来てくれ」


 地面に突き刺した農具を引き抜き、アースラたちを案内し始めた。

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