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第136話・霧の中の恐怖

 唐突に村内が濃い闇の霧に覆われたことにより、村人を含めた野盗のボスやその部下たちも激しい困惑と焦りの表情を見せていた。


「いきなり何だってんだ!? おいっ! これはいったい何だ!」

「わ、分かりやせん……」


 ボスが近くに居た部下にそう尋ねるが、村内に居る誰にもこの状況の原因が分かるわけもなく、返事は当然のように決まった答えだった。


 ――チッ、使えねえ奴だな。


「ギャアァァァァーーッ!!」

「ひいぃぃぃーーっ!!」


 部下に対して理不尽なことを思っていると、間もなくボスたちの耳に仲間たちの逃げ惑う声や断末魔の叫び声が聞こえ始めた。


「いったい何だってんだ!?」

「ボ、ボス、よく分からないですけど何かヤバイことになってるんじゃないですか?」

「んなことは分かってんだよっ!」

「す、すんません!」

「ったく……」


 ――それにしても、さっきから聞こえてくる声は部下共の声でほぼ間違いねえな。状況を考えれば誰かが俺たちの邪魔をしてるってことだろうが、こんな真似ができる奴が相手じゃ俺たちに勝ち目はねえ、ここはコイツらを囮にして逃げるのが得策だろうな。


 そんなことを考えながら、ボスはチラリと周りに居る部下たちに視線を向けた。


「おいっ! お前たちは周辺の警戒をしろ、どんな些細なことも見逃すな」

「へ、へいっ!」


 ボスの言葉に近くに居た部下が返事をすると、周りに居た数人の部下も頷いて武器を構え、周囲に視線を泳がせ始めた。


 ――よしよし、それでいい、あとは俺が逃げ切るまでしっかり頼むぜ。


 部下たちが周囲に気を配る中、ボスは気づかれないようにしてゆっくりと後退り始め、ある程度の距離を取ったところで暗い霧の中を進んで村から脱出しようとしていた。


「へへっ、アイツらには悪いが俺はトンズラさせてもらうぜ」


 残して来た部下たちが居る方へ視線を向け、ほくそ笑みながら村の外へ向けて進んでいると、残して来た部下たちが居る方から複数の大きな叫び声が木霊のように響き渡り、ボスの耳に届いた。


「クソッ、いったい何が起こってんだ!? まあいい、今はとりあえず逃げるのが先決だ」


 部下たちの断末魔の声を聞いて焦りながらも、ボスは闇の霧に覆われた村内を進み、確実に外へ近づいていた。そしてあともう少しで村の外へ出られる所まで来ると、ボスは不意に闇の霧の中に誰かが居る気配を感じた。


「だ、誰だ?」


 感じた気配にボスは恐る恐ると言った感じで声を掛けると、その方向にあった霧が少し薄れ始め、そこに佇む人影が見え始めた。

 するとその直後に佇んでいた人影の上半身が急に動き始め、その体が右斜め上に向かって切れた形でズレ落ち、血に染まった部下の死体がボスの足下に転がった。


「クロイツ!?」


 ボスが率いる部下の中でも、とりわけ戦いに秀でていたクロイツの無残な死体を目の当たりにしたボスは、その名を口にしながら数歩後退った。すると後退った先で背中に何かがぶつかり、ボスはすぐさま数歩前進してから後ろを振り返った。


「だ、誰だお前は!!」


 霧の中に佇む小さな影を見て自分の部下ではないと確信したボスは、恐れおののきながらもその影に向かって荒げた声を上げた。

 するとその小さな影が佇む場所にある黒い霧が、まるで意志を持ったかのようにして不自然に揺らめき動き、隠されたその姿を露わにした。

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