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第135話・変わらぬ世界

 アースラたちがアストリア帝国に到着した夕刻頃、シャロはダークラに乗って魔法都市アルジェリークを目指していた。


 ――そろそろ野営する場所を見つけたいけど、なかなかいい場所がないなあ。


 陽が沈み始めると辺りが暗くなるのも早い、だからそれなりに良さそうな野営場所を探していたシャロだったが、見る限り続く荒野を前に諦めの気持ちが出てきていた。


 ――最悪この荒野の中で野営になるかな。


 そんなことを考えながら先へ進み、日も暮れた頃、シャロは見渡す限りの荒野の中で持っていた燃料石に魔法で火をつけ、暖をとりながらスクローファの干し肉をかじりつつ空を見上げていた。


「空はこんなに綺麗なのに、この空の下のどこかでは今も悲劇が起こってるんだよね……」


 ニアたちをうしなってからというもの、シャロはよくそんなことを考えるようになっていた。

 そしてそんなことを考えながら細々と食事をし、そのあとで寝転がって再び空を見つめ始め、しばらく経った頃、シャロは見ていた空の一部に赤い光がぼんやりと見え、上半身を起こしてその方向を見た。


「あれはいったい」


 遥か遠くにボヤっと見える赤い光を見たシャロは、服についた土埃を払い落としながらその赤い光が何なのかを考え始めた。


「……まさかっ!」


 なんとなく見覚えのある赤い光に胸騒ぎを覚えていると、シャロはその光が何なのかを察し、急いでダークラに乗って赤い光が見える場所へと向かい始めた。

 そしてその場所へある程度近づいた時、その赤い光の正体が何だったのか、シャロはハッキリと理解した。


 ――誰かが村を襲ってるんだ!


 建物を焼く臭いに続いて聞こえ始めた、物を焼く音と人々の悲鳴、その状況にシャロがカルミナ村のことを思い出さないわけもなく、焦りの表情を見せながらダークラから降りた。


「ここに居てね!」


 乗っていたダークラに向かってそう言うと、シャロは火の手が広がる村へ向けて走り始めた。


 ――お願い! 間に合って!!


「食料と金は残さず奪え! 若い女とガキは売り飛ばすから殺さずに捕まえろ! あとは全て殺せっ!」


 野盗のボスは高らかに大きな声でそう言うと、家探しの終わった数人の遺体が残る家屋に近づき、その一部に油を撒いて火を放った。するとそんなボスの言葉に反応して近くに居る部下たちが一斉に声を上げ、それに釣られるようにして遠くに居る部下たちも声を上げた。

 そして多くの村人が恐怖におののき震え上がる中、シャロはようやく村の中へと入った。


「そんな……ああああああああああああーーーーっ!!」


 目にした光景はカルミナ村での事件を思い起こさせるには十分なほどに残酷で、シャロは一気に抑えの効かない怒りの感情が高まり、その容姿を変化させた。


「何だ今の声は!」


 怒りの叫びを聞いた数人の野盗がやって来ると、漆黒の角を生やしたシャロは震え上がりそうなほどの凍った視線を野盗たちに向け、両手を前へ突き出した。


「アクアカッター」


 シャロが放った魔法は鋭い水の刃となって野盗へ向かい、身に着けていた金属防具や武器などをものともせず、一瞬でその場に居た野盗たちの体を真っ二つに切り離した。そしてその状況に眉一つ動かさず、シャロは続けて口を開いた。


「ダークミスト」


 両手から放たれた魔法が細かい闇の霧となって村全体を素早く覆うと、シャロは冷たい殺気を放ちながら闇の霧の中を進み始めた。

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