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第134話・行く末

 狭いテーブルの上に様々な色をした石を置き始めたアースラを見ていたフルレは、その行動の意味が分からずに口を開いた。


「ベルよ、先ほどから何をしているのだ?」

「そう慌てんなって――おっし、これでいいかな。まずはシャロがどこへ行ったかだが、それを正確に知ることはできない。だがアイツがどの範囲へ行こうとしているのかを予想することはできる」

「どうやってそれを知るのだ?」

「乗用動物の貸屋だよ」

「そっか! 貸屋さんには足の速い動物や体力のある動物が居るから、シャロちゃんがどの乗用動物を借りたかで行こうとしている範囲がある程度絞れるってことだね」

「そのとおりだ、そしてもしシャロがもっとも体力がある乗用動物を選んでいた場合、アイツが行こうとしてる場所の最大範囲は、魔法都市アルジェリークか、亜人の国ゲシュテンハルトの範囲に絞られる」

「なるほど、そのような探索方法もあるのだな」

「ああ、だから夜が明けたら貸屋に行って、シャロがどの乗用動物を借りたか調べるぞ」

「うん!」

「分かったのだ」


 こうしてアースラがシャロを追いかけるための手段を提示したあと、三人は明日やるべきことの話を進め、そのあとすぐにベッドに入って眠りについた。


× × × ×


 翌朝、夜が明けたと同時に行動を開始していたアースラたちは、アストリアの壁門近くに広く展開する貸屋へおもむき、そこでシャロが借りたであろう乗用動物を貸し出した貸屋を探していた。


「――そっちはどうだった?」

「こっちは駄目だった、フルレちゃんは?」

「フルレも駄目だったのだ」

「まいったな、貸屋の連中が貸した相手のことを覚えてないってのは、ちょっと計算外だったな」


 ほんの二日前のことなら貸屋もシャロのことを覚えているだろうと思っていたアースラだったが、貸屋からすれば『いちいち誰が何を借りて行ったかなんて、覚えているわけないだろ』とのことだった。


「どうしようベル君、このままじゃシャロちゃんを追いかけるどころじゃないよ」

「そうだな」

『アースラお兄ちゃん、シャロお姉ちゃんが使った貸屋さんが分かったよ』


 出鼻を挫かれたアースラがどうしようかと考えを巡らせていると、素早く走って来たモコが念話で話し掛けてきた。


「マジか!? どこだそれは?」

『こっちだよ』


 そう言うとモコはきびすを返して来た方へと戻り始め、アースラたちはそのあとを追って行った。


『ここだよ、アースラお兄ちゃん』


 モコが連れて来た場所はアースラが一度訪ねた所で、かなり歳を取ったおじいさんが経営をしていた。


「本当にここなのか?」

『うん、間違いないよ』

「自信満々なのはいいが、どうしてそんなことが分かるんだ?」

『さっきね、そこに居るラダさんに聞いたの』

「ラダさん?」

『うん、そこに居るでしょ』


 そう言ってモコが向けた視線の先には、背中に大きなコブのあるダークラが居た。


「もしかして、そこのダークラに聞いたのか?」

『うん、シャロお姉ちゃんのことを聞いてみたら、つい二日前のお昼頃に仲間を借りて行ったって教えてくれたんだ』

「まさかモコが他の動物と話せるとは思わなかったな」

「ホントだね、でもすごいよモコ君! お手柄だね!」

「うむ、モコは凄いのだ」

『えへへっ』


 照れた感じの声音が頭に響いたあと、アースラはお店を切り盛りしている老人へ近づいて行った。


「ちょっといいか」

「おお、さっきの若もんか、どうしたんじゃ?」

「ダークラを三頭借りたいんだが、いくらになる?」

「ああ? 何だってぇ?」

「ダークラを三頭借りたいんだ! いくらになる!」

「ああ、ウチの孫は三人おってな、どの子も可愛いもんじゃぞぉ」

「アンタの孫の話なんて聞いてない! ダークラを借りたいんだよ!」

「わしゃあ堕落などしておらんわっ!」

「そうじゃねえってのっ!」


 こうしてアースラはしばらくの間、耳の遠くなったおじいさんとのやり取りに苦戦を強いられることになった。

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