第133話・理由
冒険者組合のサリィからシャロと思われる人物の情報を聞いたアースラたちは、アストリアにまだシャロが残っている可能性を考え夜まで捜索をしたが、結果としてシャロを見つけ出すことはできなかった。
「結局見つからなかったね、シャロちゃん」
「恐らく冒険者組合で情報が得られなかったから、そのままアストリアを出て他の場所へ行ったんだろうな」
「そうだとしたらシャロちゃんを見つけるのは難しいね、どこへ行ったか手掛かりがないわけだし」
「シエラの言うとおりなのだ、これではリアを捜しようがないのだ」
「どうするベル君?」
アストリアの宿に泊まっていた三人は、眠っているモコをベッドに横たわらせてから部屋の中心にあるテーブルの椅子に座り、これから先のことについて話し合いを始めていた。
「……よくよく考えてみれば、あのシャロが黙って俺たちから離れるってのがおかしいんだよな」
「確かにそうだよね、いくら落ち込んでたって言っても、シャロちゃんなら相談くらいはするだろうし……だとしたらシャロちゃんはどうして独りで出て行ったのかな?」
「どこかで死者蘇生に関する情報を掴んだが、それを俺たちに言うことができなかったって可能性もあるかもしれんしな」
「なるほど……でもベル君が長年探し回って得られなかった情報がそんな簡単に掴めたりするかな?」
「そこに関しては完全に俺の予想になるが、仮にシャロが死者蘇生に関する情報をどこかで掴んでいたとしたら、誰からその情報を聞いたか、そこが重要になるだろうな」
「そうだね、でもだとしたら誰がそんなことをシャロちゃんに言ったのかな?」
「仮にだが、死者蘇生に関する情報がある――なんてことを言った奴がストリクスの一味だったとしたらどうだ」
「なるほど、魔王崇拝者集団なら、何か妙な目的があってそんなことをしてる可能性もあるもんね。でも、もしもストリクスがシャロちゃんをそそのかしているんだとしたら、どうしてシャロちゃんにそんな話をしたのかな?」
「それは俺にも分からんが、俺たちがしばらくの間カルミナ村で活動していたことは、調べればある程度のことは分かるだろうからな。となれば、カルミナ村での出来事を知ったストリクスの連中が、傷心のシャロを何かに利用しようと考えていたとしても不思議じゃない」
「なるほどね」
「ならばその連中が居る所を虱潰しに捜せばリアが見つかるのではないか?」
「その考え方は嫌いじゃないが、事実がハッキリしない内は表立って敵対するのは得策とは言えんだろうな」
「だったらどうするのだ? このままではどんどんリアと離れてしまうのだ」
「ハッキリとしたアイツの行き先は分からんが、ある程度の予測は立てられるさ」
そう言うとアースラは道具袋から数個の錬金用素材の石を取り出し、テーブルの上に配置し始めた。




