第131話・情報収集
シャロがリーヤを出てから4日目の昼頃、途中で何度かモンスターに遭遇しながらも無事にアストリア帝国へ辿り着いていた。そしてアストリアへ着いたシャロはそのまま一直線に冒険者組合へ向かい、死者蘇生に関する情報を得ようとしていた。
「すみません、少しお時間よろしいでしょうか?」
「はい、何でしょうか?」
「死者蘇生に関する情報があれば売っていただきたいんですが、何か情報はありませんか?」
「死者蘇生に関する情報ですか? 少々お待ちください――そうですね、こちらにある資料で死者蘇生に関する記述は見つかりませんね」
「そうですか……」
「もしかしたら資料室には何かあるかもしれませんので、少し調べてみますね」
「よろしくお願いします」
シャロの言葉に優しく微笑みを浮かべると、受付の女性はスッと席を立って資料室へと向かった。
――どんなに些細なことでもいいから、何か情報が掴めたらいいけど。
「――お待たせいたしました」
受付カウンターの前で待つことしばらく、女性が戻って来て椅子に座った。しかしその表情は芳しくなく、シャロはなんとなくその答えを察してしまっていたが、僅かな期待を込めて口を開いた。
「あの、どうでしたか?」
ある種の覚悟を決めてそう問い掛けると、受付の女性はとても申し訳なさそうな表情を浮かべて口を開いた。
「死者蘇生についての情報ですが、こちらには該当する情報が一切ありませんでした」
「そうですか……」
「ですが、調べている最中に一つおかしな点に気づきました」
「おかしな点ですか?」
「はい、とても古い文献を調べていた時に死者蘇生に関する話が少し出ていたのですが、その記述の中に明らかに改竄された跡があったんです」
「改竄ですか?」
「はい、ですから死者蘇生に関する情報を集めるおつもりなら、十分に気をつけた方がいいと思います」
「なぜですか?」
「大きな声では言えませんが、文献にそのような改竄がされていたということは、外部に漏らしたくない情報であるという可能性が高いからです。そして死者蘇生に関する情報は私が知る限りは世間に出回っていない、それを考えれば、この件に関する情報を求めるのはかなり危険かもしれないということです。情報を持つ者が何らかの理由で喋ることができないとか、制限を受けているとか、もしくは情報を掴んだ時点で消されているとか、情報が出回らない理由には色々とありますからね」
――そっか、今の私みたいに誰かを生き返らせたいと考えた人は少なくないはず、なのにここまで情報が出回ってないってことは、それだけ死者蘇生に関する情報が秘匿されてるってことかもしれない。
「親切にありがとうございました」
「いえ、お役に立てずすみません」
「そんなことはありませんよ、とても助かりました、ありがとうございます」
シャロは受付の女性にお礼を言って頭を下げると、再び表情を沈ませながら冒険者組合をあとにした。
エオスに存在する国の中でも一・二を争う大きさと規模を誇るアストリア帝国なら、死者蘇生に関する情報の一つくらい手に入るだろうと考えていただけに、シャロの落胆は大きかった。
――やっぱり魔法都市アルジェリークへ行くしかない、私は絶対にニアちゃんたちを蘇らせるんだから。
折れそうになる気持ちを奮い立たせると、シャロはすぐさまアストリア帝国をあとにし、遥か北にある魔法都市アルジェリークを目指し始めた。




