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第128話・愚者の末路

 処刑を受けるリーガルが固定円柱に拘束されると、白のローブを着た女性はリーガルの側へ歩み寄り、集まった人々に向けて右手を上げた。


「この罪人は先日起こったカルミナ村での事件を引き起こした者だ。カルミナ村ではアストリア帝国に必要な唯一無二の薬材植物、ムーンティアーを栽培していた。しかしこの罪人によってムーンティアーの栽培、採取は非常に困難なものとなり、帝国での質の良い薬の流通を非常に困難なものとした。よってこの行為を国家転覆罪とみなし、この罪人に7日7晩の拷問を繰り返し科したあと、魔法によってその存在すら残さず消滅させる。ここに来られた方々はこの処刑をその目に焼きつけ、自身や大切な人がこのような刑に処されないよう心がけてほしい。それではアストリア帝国最高法務執行官であるこのアイリーンが、罪人に対する刑の執行を宣言する。では罪人の猿轡さるぐつわを外してください」

「はっ!」

「た、頼むから助けてくれ! 俺が悪いんじゃない! 俺が悪いんじゃないんだっ!!」


 アイリーンの言葉を聞いた兵士の一人が猿轡を外すと、リーガルはすぐに見苦しい言い訳を始めた。しかしアイリーンはリーガルの言葉に一切耳を傾けることなく、その口元に右手の平を近づけた。


「プロテクト、ファイアシュート」

「ギャアアアアアアアアアッ!! 熱いっ!! 熱いいいいいいいいいいいっ!!」 


 舌を噛み切られないようにプロテクトをかけたアイリーンは、その直後に加減した魔法を放ってリーガルの皮膚をゆっくりと焼き始めた。するとリーガルの皮膚と肉を焼く臭いが周辺に漂い始め、その臭いが風に乗って風下に居る観客たちに届いた。


「うぐえっ!」

「うぷっ」


 人を焼く臭いはとても不快なもので、その臭いを嗅いでしまった人たちの何人かが嗚咽おえつを漏らしながら鼻や口元を押さえ始めた。


「ここへ来られた方々は事前に注意を受けたと思いますが、拷問は見る者に精神的、肉体的な負担を強いる場合があります。ですから無理にこの場へ留まろうとは思わないでください、刑はこれからもっと苛烈になりますので。ヒーリングライト」


 ある程度リーガルを焼いたあとで治癒魔法をかけ始めると、数十人ほどが席を立ち、その場を離れて闘技場をあとにし始めた。


「ガイアバレット」

「うぐああああああああっ!!」


 焼いたリーガルの治癒が終わると、アイリーンはすぐに別の魔法を使い、その体の至る所に石礫いしつぶてによる貫通痕をつけた。


「た、頼む、もう止めてくれ……」

「ヒーリングライト」


 二度目になる魔法を受けたあと、治癒魔法を行使している最中に兵士が拷問道具を用意し、アイリーンはその内の一つである爪を剥ぐ道具を手に取った。


「や、止めろっ! 止めてくれっ! ギャアアアアアアアアアーーーーッ!!」


 道具を持ったアイリーンは少しも表情を変えず、一切の躊躇も見せずにリーガルの爪を順番に引き剥がし始めた。そしてその行為にリーガルは凄まじい絶叫を上げ、自分の逃れられない死の運命を悟って舌を噛み切り自殺を図ろうとした。


「うがっ!?」


 しかしその行為はプロテクトによる硬化がかけられた舌には通じず、逆に噛み切ろうとした歯の方が砕け折れ、リーガルは更なる苦しみの声を上げた。

 そして舌を噛み切って苦しみから解放されることができないと知ったリーガルは、アースラのついた嘘の魔法を信じて嘘を口にしたが、嘘をついても死ななかったことでようやくアースラのついた嘘に気づき、絶望で表情を歪ませた。


「どうだ、俺やフルレが手を下すより、こっちの方がよっぽど苦しと思わないか?」

「ふむ、確かにこの方があの愚か者を後悔させるにはいいかもしれんのだ」

「理解してもらえたみたいで良かったよ」

「うむ、それにベルがとんでもない思考の持ち主だということが よく分かったのだ」


 そう言うとフルレは席を立ち、その場から離れ始めた。


「もう見なくていいのか?」

「これから奴が受ける仕打ちを思えばほんの少しだが留飲りゅういんは下がったのだ」

「そうか」


 アースラは刑を受けているリーガルへ再び視線を向け直し、フルレはその場をあとにした。

 こうしてリーガルは絶望の中で7日7晩の拷問を受けた末に、8日目の夜明けを迎えたのと同時に生きたまま焼き殺され、その体を魔法で完全に消滅させられた。そしてリーガルが拷問を受け続けた間、アースラはその様子を毎日見に訪れていたが、シャロとシエラは一度もその様子を見に来ることはなかった。

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