第127話・犯した罪の大きさ
カルミナ村の滅亡を引き起こしたリーガルがリーヤの治安維持隊へ自首し、3日が過ぎた。
「フルレ、準備はできたか?」
「大丈夫なのだ」
「シエラ、シャロとモコを頼んだぞ」
「うん、分かった」
「そんじゃ行くか」
「うむ」
外出の準備を整えたアースラとフルレは部屋をあとにし、リーガルの公開処刑が行われる円形闘技場へ向かい始めた。
「それにしても、人の裁判とは時間がかかるものなのだ、こんなに待つことになるとは思わなかったのだ」
「そうは言うが、これでも早い方なんだよ、普通は裁判を受けて判決が出るまで早くても20日くらいはかかるからな」
「なぜそんなに時間がかかるのだ?」
「本当にそいつが罪を犯したのか調べたり、やらかした罪の事実合わせに時間がかかるからさ。もっとも罪を犯した奴が素直に自分のやらかしたことを告白すればいいんだろうが、現行犯でもない限りは無実を訴えるし、冤罪の可能性も考慮しないといけないから時間がかかるのさ」
「ならばどうして今回は早かったのだ?」
「リーガルが嘘をつけなかったからってのが大きいかもしれんが、今回の件については俺を含めて色々なところから証拠や証言が出てるからな、その分早くなったんだろ」
「ふむ、話は分かったが人の作った法律とは面倒なものなのだな」
「魔界には裁判とかないのか?」
「あるにはあるのだ、だがほとんどの場合は捕まる前に抵抗するから、裁判を受ける前にその場で殺されてしまうのだ」
「なるほど」
そんなことを話しながら立ち並ぶ商店の通り道を抜け、しばらくして闘技場へ着くと、そこには事前予告を聞いて集まった人々が蛇のようにうねった長い行列を作っていた。
「こやつら全員処刑を見に来たのか? 人とは物好きな生き物なのだ」
「物好きと言われればそうかもしれんが、人は好む好まざるは別にして見たいのさ、普通では見られない残酷なものを。そしてそれを見て楽しんだり、自分への教訓や戒めにしたりするのさ」
「人とはよく分からない生き物なのだ」
「同じ人の俺でもよく分からんよ」
こうして闘技場へ続く行列に並んだアースラとフルレは、中へ入るまで人についての話を続けた。そして行列に並んでから約1時間後、アースラたちはようやく円形闘技場の中へ入ることができた。
「ここが処刑場か、ずいぶんと大きいのだ」
「普段は兵士の訓練なんかに使われているが、国家転覆罪が適用された罪人はここで拷問と処刑を受けることになるんだ」
そんな話をしていると、いくつもの段状になった観客席に集まった人たちから声が上がり、闘技場にある四つの出入口の一つから二人の兵士と白のローブを着た女性と、猿轡をされた上に後ろ手に縄で繋がれ暴れるリーガルが姿を現した。
リーガルは酷い表情で涙を流しながら頭を左右に振り、その場にへたり込んで必死に闘技場の中へ入ることを拒んでいた。
しかしそんな子供じみた抵抗がいつまでも通じるわけもなく、両脇に居る兵士二人に円形闘技場の中心まで引き摺られると、そこに設置された固定円柱に女性が放ったライトバインドで拘束された。




