表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/145

第122話・愚者

 助かる道が示されホッとした表情を見せたリーガルに対し、アースラは怒りを感じつつも口を開いた。


「それじゃあ質問だ、今回の事件は全てお前がくわだてた、それで間違いないな」

「違うっ! この計画は酒場で飲んでる時に知り合ったソナスって奴の案だ! 俺はソナスから聞いた話を元にして今回の計画を実行しただけなんだ! 絶対に上手くいくって言われたし、俺も上手くいくと思ったから……」

「ほう、そのソナスって奴はどこの誰だ?」

「分からない、ソナスは自分のことをほとんど話さなかったから」

「よくもまあそんな得体の知れない奴の話に乗ったもんだ」

「仕方なかったんだ……手を出した商売に全部失敗して多額の借金だけが残ったから、それを清算してまたやり直したかったんだよ……」

「そのために言われた計画を実行しわけか?」

「ムーンティアーを含めた薬材植物の収入があれば俺の借金も余裕で清算できるし、人生をやり直せる、だから計画を実行したんだ」

「冒険者と野盗を使って村を襲わせたのに、それを俺たちに知らせに来たのはなぜだ?」

「もともと金は俺と冒険者たちの五人で分ける算段だったから、邪魔な野盗たちは全員あなたたちに始末してもらう予定だったんだ。だから冒険者たちには金を盗ったらすぐに村を抜け出すように言って、あとはあなたたちに野盗連中を始末してもらう手はずだったんだ」

「野盗たちに村人を殺せと言ったのはなぜだ? 金を盗るだけなら殺す必要はなかったとはずだ」

「村人が生きていたら、アースラさんたちが邪魔な野盗たちを殺してくれないと思ったんだ。だから野盗たちには『目撃者を残さないようにすれば逃げても足がつかない』って言っておいたんだ」

「俺たちを利用するためだけにニアたちを殺させたのか?」

「あ、ああ」


 それを聞いたアースラはリーガルを殴り殺してしまいそうになる気持ちを全力で抑え込みながら、強く両手を握り締めた。


「仲間の冒険者四人を毒殺したのはなぜだ?」

「最初は報酬を分け合うつもりだったんだ、でも計画が上手く行ったら全部俺の物にしたくなった、だから毒殺しようと思った」

「ちっ、どこまでも身勝手な奴だな」

「俺は頑張ったんだ! だけど俺の頑張りを世間は認めなかった! 全部俺を認めなかった奴らが悪いんだっ!」

「そんなことは治安維持隊の詰め所に行って話せ」

「それじゃあ助けてくれるのか?」

「約束は約束だ、だからこの場は助けてやる。だがお前がこのあと素直に自首して真実を話す保証はない、だから逃げも隠れも嘘もつけないようにさせてもらう」


 アースラはリーガルへ近づき、心臓がある部分へ手の平を向けた。


「ディストーションデス」

「い、いったい何を?」

「これはお前が嘘をついた瞬間に発動し、心臓を潰す魔法だ」

「ば、馬鹿な、そんな魔法があるなんて聞いたことない」

「信じる信じないはお前の自由だが、死にたくなければ嘘をつかないように気をつけることだ。死にたいなら嘘をつけばいい、飛びっきり苦しい死に方が体験できるだろうからな。ちなみにこの魔法は俺の魔力でいつでも発動することが可能性だ、だから逃げ隠れしようなんて考えない方が身のためだ、自殺願望があるなら止めはしないが」

「わ、分かった、逃げも隠れもしないし嘘もつかない」

「いいだろう、それじゃあこれからすぐに自首してもらおうか――と言いたいところだが、最後に一つだけ聞きたいことがある。俺たちが最初に村を訪れた時に混成されたモンスターの群れが攻めて来たが、あれもお前がやったことか?」

「違う、あれは多分ソナスがやったんだ『新しくやって来る連中の力を試しておいた方がいい』とか言ってたからな」

「……分かった、あとは治安維持隊の詰め所に行って全てを話して来い」


 そう言うとアースラは部屋の出入口への道を空け、それを見たリーガルは急いで部屋を出て行った。


 ――さてと、俺も裏で待たせてるジードに会わねえとな。


 リーガルが部屋から走り去ったあと、アースラは大きく息を吐き宿の近くで待たせているジードのところへと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ