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第119話・優しい人ほど傷つく世界

 宿を出たアースラは猫飯亭へ向かい、そこにある別室でジードがやって来るのを待っていた。そしてジードを待つ時間をいつになく長く感じていると、個室の扉が静かに開き、裏の仕事の相棒であるジードが素早く中へ入って来た。


「待たせたな」

「いや、突然呼び出して悪かったな」

「遅かれ早かれ呼び出されるとは思っていたからな、問題ないさ」

「それなら俺が呼び出した理由も分かってるよな」

「お前が表で何をやってるのかそれなりに把握しとくのも俺の仕事だからな、まあそれなりには」

「だったら話が早い、今回の件に関わった奴らの情報を教えてくれ」

「やっぱりそういうことか、まあそうだとは思ったがな……今回カルミナ村を襲った連中の中心人物は、タリム、ギル、ガル、ライドの男四人組だ。カルミナ村で警護をする以前は、アストリアを中心に活動をしている冒険者だったらしい」

「そいつらのことはここへ来る前にガリアから聞いた、俺が聞きたいのはそいつらが今どこに居るかってことだ」

「俺の調べでは、クリムゾンフォレストに向かう四人を見たって情報を得てる。もしかしたら、そこに奴らが使っている秘密のアジトみたいなのがあるのかもしれん」

「クリムゾンフォレストか、分かった、それだけ分かれば十分だ」


 話を聞いたアースラは素早く席から立ち上がり、やって来たばかりのジードを置いて部屋から出て行こうとし始めた。


「待て待て! そんなに慌てるなっ!」

「なんだ、他に何かあるのか?」

「実はこの件について調べていた時に妙な話を聞いてな、それで色々と調べてみる内に分かったんだが、この事件の真の首謀者は、村を襲った野盗崩れの連中でもそいつらを先導した冒険者四人でもない」

「は? だったら誰が今回の件を計画したってんだ」

「それは――」


 真の首謀者が居ると口にしたジードからその名前が告げられると、さすがのアースラも驚きの表情を隠せなかった。


「それ、マジなのか?」

「俺の情報をどう受け取るかはお前次第だが、信じられないならお前が直接確かめてみればいい」

「……分かった、情報に感謝する」

「いいってことよ、お前とは長いつき合いだしな、それにお前の怒りは俺にもよく分かる。分かるからこそ裏の世界に身を置いてこうしてるわけだしな、だからしっかりとケジメをつけて来い」

「ああ」


 ジードの言葉に短く答えると、アースラは部屋を出て猫飯亭をあとにし、リーヤの町門まちもん近くにある貸出し屋へ向かって行った。


 ――アイツには今回の件も辛いだろうな、心の痛みは時が経てば和らぐこともあるが、大切な人を亡くした傷は一生消えることがない。アイツの傷つく姿は見たくないが、それでもアイツは戦い続けるんだろうな、自分がどれだけの傷を負ったとしても、その手を血で染め続けるとしても……。


 辛そうな表情を浮かべながらそんなことを思い、アースラが居た席を見たあと、ジードは個室にある棚から酒が入った瓶とコップを取り出し、注ぎ入れた酒を一気に飲み干した。

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