第11話・絶対強者
現れた盗賊団の全てを戦闘不能にして洞窟内を進み洞窟の最奥部へと辿り着くと、そこには魔法玉が付いた杖を持った背の小さな女性と、その女性より頭二つ分くらい背の高い男、その男よりも更に体の大きな大盾を持った男が居た。
「よくここまで来れたわね、褒めてあげる」
数本の松明の灯りが最奥部の窪んだ壁で洞窟内を明々と照らす中、背の小さな女性がアースラを見下すようにそんな言葉を投げ掛けた。
「あんな奴らを黙らせた程度で褒められるとは、この盗賊団のボスも大したことはなさそうだな」
「なんですって?」
「おっと、もしかしてアンタがボスだったか? あまりに幼稚な物言いだからボスの取り巻きの雑魚かと思ったよ」
ボスが低身長の女性と知っていながらアースラそう言い放った。
「言ってくれるわねアンタ、楽には死ねないよ」
「はあっ……」
「なんだキサマ! 溜息なんぞ吐きやがって!」
「聞き飽きるくらいに聞いた言葉を聞けば溜息くらい出るだろ」
「ホントいい度胸してるわね、いいわ、かかって来なさい」
アースラは女ボスの言葉を聞いて前進を始めたが、数歩進むとすぐにその足を止めた。
「どうしたの? 今になって怖気づいた?」
アースラはボスの言葉に答えることなく周囲に視線を泳がせると、おもむろに右手と左手を斜め前へと突き出した。
「トラップイレース」
突き出した両手からいくつもの光の矢が飛び出し、周辺の地面や壁に仕掛けられた全ての罠を撃ち貫いた。
「あの数の罠を一瞬で壊すなんて……アンタいったい何者なの?」
「俺が何者か知る必要はない、無意味だからな」
「そう、だったらアンタを殺して私の忠実な死者の下僕にしてあげるわよっ! 死体は焼け焦げていようが関係ないからね! プリズマティックレイ!」
「マジックシールド」
ボスは振りかざした杖から七色に輝く魔法を放ったが、アースラの防御魔法によって完全に防がれ、眼前で綺麗に消え去った。
「第7序列が効いてない!? そんなことあり得ないわ……」
実力に絶対の自信があったボスが驚愕していると、大盾持ちではない方の男が一歩前に踏み出た。
「ボス、ここは俺に任せて下さい、序列上昇、デス!」
「創造魔法、魔法反射」
男はアースラの命を奪い取るつもりで使用できる魔法ランク上げて死の魔法を使ったが、その魔法は創造魔法によって反射され、大盾を持った男も巻き込み一瞬で二人の命を奪い取った。
「い、今のは何……いったい何をしたの!?」
「そいつが使った魔法を反射しただけだ。それにしても、相手に触れていない場合のデスの成功確率はかなり低いはずなんだが、その二人はよっぽど運が無かった――いや、この場合は幸運だったと言うべきかな」
「ま、魔法を反射する魔法なんて聞いたことない……アンタいったい何者なの!?」
ボスは絶命した二人を見ながら恐怖の表情を浮かべ、持っていた杖を落として後退り始めた。
「わざわざその質問に答えてやる義理も義務もない。さてと、そこの二人があっさり死んじまったのは予想外だったが、そろそろ終わりにするか」
「ひっ、ゆ、許して! 何でもするから許して! 奪った金や財宝も全部あげる! だから許して!!」
「この期に及んでも略奪した物を代価にしようとするのか、つくづく救えない奴だな」
ボスはアースラの鋭い視線に腰を抜かしてその場にへたり込み、ガタガタと体を震わせ始めた。




