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第105話・代価の価値

 リーヤに買い出しへ行くためにそれぞれが村を出る準備を済ませたあと、アースラとシャロはニアを含めた四人の村人を連れてカルミナ村を出ようとしていた。


「シエラ、フルレ、帰りは明日の夕刻になるだろうから、俺たちが居ない間のことは任せたぞ」

「うむ、フルレたちに任せておけば何の心配もないのだ」

「うんうん、こっちのことは心配ないから、ベル君も気をつけてね」

「ああ」

「それと、お土産期待してるからね、希望は猫飯亭のスクローファまんかな」

「へいへい、分かったよ」

「やった! ニアちゃんとシャロちゃんも気をつけてね」

「うん!」

「はい、気をつけます」

「よし、それじゃあ行くぞ」

「お母さん、おじいちゃん、行って来るね」

「アースラさんとシャロさんの言うことをちゃんと聞くのよ、迷惑をかけないようにね」

「うん!」


 こうしてアースラたちはカルミナ村をあとにし、円形城塞都市リーヤへ向かい始めた。


× × × ×


 村を出て併走する三台のウーマ車、アースラはその中心にあるウーマ車の御者ぎょしゃ席から後ろを振り向き、ニアと話をしているシャロを見た。


「シャロ、今回はお前が個人的に受けた便利屋としての初めての依頼だ、だから俺は基本的に口出しも手出しもしない、だからしっかりとニアを守れ」

「はい、しっかりと守ります」

「よし、それじゃあ後方の警戒は任せたぞ」

「分かりました」


 シャロの返答を聞いたアースラは再び前を向き、鋭い視線を周囲に向け始めた。するとシャロもほろがされた荷車にぐるまの後方へ移動し、周囲の警戒を開始した。


 ――さてと、何も起こらなければいいけど。


「シャロお姉ちゃん、我がまま言ってごめんね」

「どうしたの急に」

「ニアね、どうしても買いたい物があって町に行きたかったの。でもね、3ヶ月前に町へ行く途中のお父さんとおばあちゃんがモンスターに殺されちゃったから、ニアがもっと大きくなるまでは絶対に村を出ちゃいけないって言われてたの」

「そうだったんだ……そうまでしてニアちゃんが買いたい物って何なの?」

「もうすぐお母さんのお誕生日だから、お父さんが毎年買ってたお母さんの好きな香水をプレゼントしたかったの。でもニアの髪飾りだけじゃシャロお姉ちゃんにお仕事を頼むのに全然足りなかったよね?」

「そんなことないよ、だってこれ、ニアちゃんの大事な物だったんでしょ?」


 シャロはそう言いながら、自分の髪につけている銀色の羽型髪飾りに優しく触れた。


「うん、飾り職人だったお父さんに教わってニアが初めて作った髪飾りなの」

「えっ!? そんな大事な物を私にあげて良かったの?」

「うん、大事な物だけど、シャロお姉ちゃんが使ってくれるなら嬉しいよ」

「そっか、この髪飾り似合ってるかな?」

「凄く似合ってるよ! シャロお姉ちゃん可愛いっ!」

「そうかな?」

「うん! だからずっと大切にしてね」

「ありがとう、ずっと大切にするね」

「うん!」

「シャロ! 右前方からモンスターが来てる! ウーマが止まったら俺は迎撃に出るから、お前はここで周囲の警戒をしながらみんなを守れっ!」

「はいっ!」


 シャロの返事と共にウーマの走る速度が徐々に落ち、アースラはある程度速度が落ちたところでモンスターが迫る方へ向かって行った。そしてウーマが足を止めて荷車が止まると、シャロは急いで荷車のほろの上に登り全方位の警戒を始めた。

 こうして最初のモンスターの襲撃を無事に防いだあと、リーヤへ着くまでに数回の戦闘が行われたが、アースラとシャロはその全てを見事に退け、無事にニアたちをリーヤまで到着させることができた。

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