第104話・初依頼
「ニア、どうしても俺たちと一緒に来たいのか?」
「うん、一緒に行きたい!」
「俺たちのやろうとしてることが遊びじゃなく、命を失う危険があることも分かってるのか?」
「う、うん」
「なるほど、だったら依頼人としてシャロに頼んでみるといい、無事に帰って来れるように守ってほしいってな」
「アースラさん!?」
「師匠、何を言ってるんですか!?」
「シャロ、お前はニアを町に連れて行ってやりたいと言ったよな」
「はい」
「だがこれは遊びじゃない、だからニアを連れて行くわけにはいかない、それはお前も分かってるよな」
「はい、分かっています」
「お前が便利屋としてニアの依頼を個人的に受けると言うならそれは仕事になる、だからニアを連れて行かないわけにはいかない。だがニアも自分の望みを叶えるには、それだけの対価をシャロに支払わないといけない。だからニアにそれができるのなら、俺たちについて来ることはできるだろうさ」
「対価ってお金のことだよね? ニアは大金なんて持ってないからついて行けないってことだよね……」
ニアはしょぼんと肩を落とし、涙を零しながら顔を俯かせた。そしてそんな姿を見たシャロはニアへ近づき、視線を合わせるために膝を曲げた。
「ねえ、ニアちゃんの大切にしてる物って何かな?」
「大切にしてる物? 沢山あるけど、一番大切にしてるのはこれかな」
そう言うとニアは自分の頭につけている銀色の羽型髪飾りを手に取った。
「それがニアちゃんの一番大切な物なんだね?」
「うん」
「だったらお金の代わりにそれを私にくれないかな? そしたらニアちゃんの依頼を私が受けるから」
「えっ!? それでいいの?」
「うん、便利屋としての私がどんな対価を貰って仕事を受けるかは自由だから。そうですよね、師匠」
「お前がそれで納得して引き受けるなら、俺が口を挟む筋合いはねえよ」
「どうする? ニアちゃん」
「……分かった、シャロお姉ちゃん、これでニアが無事に帰って来れるように守って」
ニアは羽型の髪飾りを外してシャロに差し出し、シャロはそれを受け取った。
「ニアちゃんの依頼、確かにこの私が引き受けたよ」
「うん!」
「てなわけで、ニアの依頼をシャロが引き受けたわけだが、村長とターニャはどうだ? 何か不安や心配があるなら今の内に言っておいた方がいいぞ」
「……ニアのことは心配ですが、ニアがそれを渡してまで町へ行きたいと言うならもう止めはしません。それにシャロさんが守ってくれると言うのですから、きっと大丈夫だと思います。シャロさん、娘をよろしくお願いします」
「私からもよろしくお願いしますじゃ」
「はいっ、任せてください! ニアちゃんは何があっても私が守りますから!」
「よろしくお願いします。さあニア、急いで着替えておいで」
「うん! ありがとう、お母さん、おじいちゃん」
こうしてニアは自分の部屋へ着替えに向かい、初めて村を出て町へ行くことになった。




