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第99話・遊びにも本気です

 カルミナ村へ来た翌日の昼前、フルレは村の大きな倉庫にある木箱の中に潜み笑みを浮かべていた。


「フフフ、よもやこんな所にフルレが隠れていようとは誰も思わないはずなのだ、これでフルレの勝利は明らかなのだ」


 暗い箱の中でほくそ笑んでいると入っている箱の蓋がそっと開き、その隙間からニアが顔を覗かせた。


「フルレお姉ちゃんみーつけたっ!」

「馬鹿な!? なぜフルレがここに居ると分かったのだ? フルレの潜伏は完璧だったはずなのだ!」

「だってフルレお姉ちゃん箱の中でブツブツ独り言を言ってるんだもん、ニアじゃなくても気づいちゃうよ」

「なんと!? まさかフルレがそんな失態を犯していたとは思わなかったのだ……」


 ニアの言葉に愕然がくぜんとしたあと、フルレはしょんぼりとしながら箱から出て来た。


「今度はシャロお姉ちゃんを見つけなきゃいけないから、フルレお姉ちゃんも一緒に捜して」

「ふむ、それがかくれんぼとやらの決まりなら、リアはすぐに見つけ出してやるのだ」

「うん! 行こうフルレお姉ちゃん」

「うむ」


 こうしてニアとフルレは協力し、どこかに隠れているシャロを捜し始めた。


「アイツら今度はかくれんぼを始めたのか」

「子供は元気でいいですよね、歳を取るとあんなことはできなくなってしまう」

「そうだな」


 一緒に見張りをしている村人のリーガルの言葉に頷くと、アースラはシャロを捜しているニアとフルレから視線を外し、村の外へ監視の目を向けた。


 ――しかしまあ、ニアとフルレがシャロを見つけるのはまず無理だろうな、アイツ何気に潜伏が上手くなってるし。


 そしてニアとフルレがシャロを捜し始めてから1時間ほどが経ったが、二人は未だにシャロを見つけきれないでいた。


「全然見つからないのだっ! リアはいったいどこに隠れておるのだ!?」

「ホントに見つからないね、どこに隠れてるのかな?」

「このままではフルレたちの負けになってしまうのだ、意地でもリアを見つけ出すのだ!」

「でもどこを捜しても見つからなかったよ? シャロお姉ちゃん」

「うーむ……そうなのだ、ベルにリアが隠れていそうな場所を聞いてみればいいのだ」

「あっ、そっか! アースラお兄ちゃんはシャロお姉ちゃんの師匠だって言ってたから、隠れてる場所も分かるかもしれないもんね」

「うむ、ではさっそく聞きに行くのだ」

「うん!」


 一つの解決法を見出した二人は意気揚々と言った感じで見張り塔へ向かい、長い梯子はしごを上って行った。


「ベルよ、そちに聞きたいことがあるのだ」

「何だ?」

「フルレたちは今かくれんぼをしておるのだが、リアが隠れていそうな場所を教えてほしいのだ」

「お前らまだシャロを捜してたのか、そろそろ降参して出て来てもらった方がいいんじゃねえか?」

「それではフルレたちの負けになるのだ、このまま無様に敗北を認めるなど断じてあってはならんのだ!」

「ニアもシャロお姉ちゃんを見つけたい!」

「その意気込みはいいが、シャロを見つけるのはかなり難しいと思うぞ」

「どうして?」

「アイツは敵から隠れ潜む方法も学んでるしその技術も上がってるから、お前らがシャロを見つけるのは難しいんだよ」

「そんなあ、それじゃあシャロお姉ちゃんはニアたちには絶対に見つけられないの?」

「絶対ってことはないが、可能性は限りなく低いだろうな」

「ベルよ、なんとかリアを見つけ出す方法は無いのか?」

「無くはないが、遊びとはいえアイツの邪魔するのはどうかと思うしな……まあ特別に助言くらいはしてやるよ」

「それでいいのだ」

「かくれんぼだからってずっと同じ場所に隠れているとは思わないことだ、それさえ分かっていればアイツを見つけられる可能性は上がるだろうよ」

「なるほど、隠れるなどといった行為をしたことがないフルレには盲点だったのだ」


 ――実力を考えればフルレは敵を前にして隠れる必要なんてなかっただろうし、そんな考えに至らんのも無理はないな。


「さあ、助言はしてやったんだからシャロを捜して来い」

「うん、ありがとうアースラお兄ちゃん」

「今度こそリアを見つけ出すのだ!」


 こうして助言を貰った二人は梯子を下りてシャロを再び捜し始めたが、結局シャロを見つけ出すことはできなかった。

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