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隣国の王女は、弟王子の嫁の話をしていたはずだ。なぜかずっと。

だから今も、話していたのは弟王子の嫁の話のはずで、なのに「それは姉様がなるんだから」ということは……。


(あれ?姉弟って結婚できるっけ?)


それとも、ファンタジーだし、乙女ゲームだし。法律というか倫理観というか、そういうのはないとかなんだろうか。


(だから驚いてるのが私とエミリちゃんだけとかなの?そんなことある?)


多分同じようなことを考えてるエミリちゃんと私が、顔を合わせてなんともいえない顔をしてしまっているのをよそに、王女と王子はすっかり二人の世界である。


「えー?ヴァルティス公爵令嬢、なかなか素敵なご令嬢なのよ?気の強そうなところが面白くて!」


(えっと、気が強そうどころだったっけ……?二人してものすごく恐ろしい言い合いしてなかった?というか、言うに事欠いて面白いって……誉めてなくない?)


「……姉様がその令嬢を気に入ったのは分かった。もちろん、同意の上なら、国に連れ帰ればいい。でも、あくまで姉様の客人としてね」

「……まあ。強情っぱりだこと」

「どっちが」


(おおっと、)


王女は意外とそうでもないっぽいけど、王子の態度の雲行きが怪しくなってきた。このまま本意気の喧嘩をされれば厄介である。

皇太子もそう思ったのか、若干気まずそうにも咳払いをひとつした。

王子はそれだけで、ここが今、隣国の、しかもそういう王族に関わる話をほいほい知るべきでない他人がいる場であると、我に返ったらしい。


「……長居をしました」

「いや」

「ふふっ、申し訳ありません、殿下。シーちゃんにはしっかり言って聞かせますから」

「……いや、」

「「……」」


やっぱりこの隣国の王女、最強である。色々な意味で。

若干嫌そうな顔をする王子をよそに、王女はよく分からないけどにこにこしたままだった。

そうして、二人はそのまま簡単な礼をとると、ようやく生徒会室を後にするようである。皇太子とうちの兄、それからディーは、見送り?をするみたいで、王子たちと一緒に出て行った。


(なんだか、嵐が過ぎ去った後みたいなんだけど……)


多分、そう思ったのは私だけじゃなかったと思う。





「えっ、あの二人って血、繋がってないの?」


隣国の王子王女と皇太子たちが生徒会室を出てからしばらくして、ロイはふいに教えてくれた。どうやら、私たちがなんとも言えない顔をしてしまっていたのに、ちゃんと気付いていたらしい。


「……まぁ、詳しいことは分かりませんけど」

「そうだったのね……いや、ていうか、ロイはなんで知ってるの?そんなに有名な話?」

「いえ、俺もアヴェル様から聞くまでは知りませんでしたよ。アヴェル様は皇太子殿下から聞いたそうです」


道理であの場で動揺していたのが私とエミリちゃんだけだったわけである。


「……ファンタジーの中といえども、血が繋がってるとか繋がってないとかはしっかりしてるんだね」

「日本で作られてるんだから、そりゃそうなんじゃない?」

「なるほど……」


思わず普通に納得してしまった。


「それにしても、なんであの王女さまはあんなに弟の嫁探ししてるんだろ……」


隣国のことな上、男女のことなので詮索するのも野暮だとも思うけど、どうも王女の行動はなんというか、よく分からない。


「そんなの、私たちがここでどうこう言っても永遠に答えは出ないわよ」


ですよねー。もちろん、分かってますけども。


「……あの弟王子、王女のこと好きっぽいのにね……」

「……」

「……」

「……なによ二人とも。そんな変な顔して……」

「……あんた、そういうの、ちゃんと分かるのね」

「……そんなに驚くこと?」

「自分の胸に手を当ててみれば?心当たりがあるかもよ?」

「……」


確かに私は恋愛関係の話とかはからっきしだけども。

眉をひそめて反論出来ないままでいると、エミリちゃんはすぐに肩をすくめる。


「まぁ……男女のことなら私だってわからないわよ。その上、姉弟なのに血が繋がってないって言うんだから、複雑な事情があるのは間違いないわよね。王家のことだったらなおさら」

「……ファンタジーって大変ね……」

「……あんたも、人のこと言ってられる立場じゃないと思うけど?」


間髪もいれずに、エミリちゃんは言葉を挟んできた。思わずぐ、と口を引き結んでしまう。


「……アンリエッタって令嬢が、本当に皇太子殿下を好きだったかは知らないけど……本来、単純に好きだ嫌いだの恋愛とか結婚の話に、命の危機が絡んでくるなんて……そんなの、思ってもみなかったわよね?あんたもそうでしょ?」

「……」

「……怖じ気づいた?」

「……きつい言い方ぁ……」

「でも、私はそうよ」

「……」

「あんな化け物けしかけられて、命狙われて。その理由が、平たく言えばただの嫉妬でしょ……?そりゃ怖いに決まってるわよ」

「……うん」

「だから、そういう色々を含めて聞くわ」

「……」

「あんた、皇太子殿下のこと、どうするの?」






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