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うわぁ。


「「そうなんですね……」としか返せなかったのも、無理はないだろ」


兄は遠い目で言った。


「なんて冷たい人だと思ったよ。冷たくて怖い人だ、ってな。近くに誰がいようが、それどころか、いなくなろうが、殿下にとってはどうでもいいんだ。だって、誰でも一緒だから。それは多分、殿下が皇太子である限り」

「……」

「……でも今は違う」

「え……?」

「今の殿下を見てみろ。冷たさの欠片もない。むしろ、毎度毎度不憫にもほどがある」

「……」

「お前のせいでな」


ここで、兄は堪えきれなくなったように吹き出した。ちょっと……吹き出すようなところだった?


「お前ときたら、皇太子殿下相手にすすんで挨拶にはいかないわ、初めて話したかと思えば説教するわ、」


げ。初めて会ったとき皇太子相手に説教っぽいことしたことバレてる。

皇太子が話したのだろうか。というか、そんなこと覚えてないでほしかった。


「殿下の再三の誘いはスルーするわ。というか、そもそもあれだけ分かりやすい殿下のあの感じを、まぁ見事にスルーしたもんだよ」


うう。兄すらも気付いてたのか。

でも、だってしょうがないじゃない。分からなかったんだから。


「……まぁ、でも、殿下にとっては、それがよかったかもしれんと、俺は思ってる」

「……」

「お前の全ては、殿下にとっては新鮮で、唯一だったんだろう。お前ほど、裏表のなく色々突っ走るような令嬢なんて他にいないだろうからな」


いや、それはちょっとあんまり嬉しくない表現なんですけど。


「殿下があのまま育ってたら、今頃心の冷たい、誰も信用出来ないような懐疑人間になってたかもしれん。しかも顔は笑顔のままでな……。怖すぎるだろう?」


まさに、ゲームの裏表キャラみたいな感じに、ということだろう。

思わずエミリちゃんを見てしまったけど、エミリちゃんも同じことを思ったのか、目が合った。

まぁ確かに、ゲームの中ならキャラが立ってるのかもしれないけど、実際にいたら怖いかも。顔が美しい分、怖さも倍増だっただろう。


「だから、殿下には、お前が特別なのかもしれないな」

「……」

「リーア」

「……はい」

「げーむだのしなりおだの、俺にはよく分からん話だ。でもな。恋愛問題は置いておいたとしても、真っ直ぐ向かってくれる相手に対して、背を向けてただ逃げるというのはお前らしくないと、お兄さまは思うがな」

「……」


改めて、皇太子に悪いことをしてしまったな、と思った。いくら混乱したからって、みんなあからさまだと分かるくらい、はっきりと逃げてしまったんだから。


「……分からないなりに、向き合ってみないと、ですね」

「……ああ」

「お兄さま、ありがとうございます。今度、殿下へのお詫びの品を一緒に考えてくださいね。それを足掛かりに、しっかり殿下と向き合ってみることにします!」

「あ、いや、向き合うといっても、ほどぼどにな?」

「あっ!」

「え?」


ちょっとした決意を固めたとこだったのに、エミリちゃんは急にすっとんきょうな声を上げた。今まで黙って話を聞いてたのに。


「エミリちゃん……?」

「……じゃああんたまさか、正式に隣国の王女やら公爵令嬢の皇太子を巡る熾烈な争いに参戦する、ってことになるわけ……?」

「えっ」


いやー……ええ?


「そういうことに、なります……?だって別に、そういう意味で受け入れるとかって、まだ分からないじゃない?」

「どうかしらね。皇太子の近くにいたら、自然と参戦する羽目になるんじゃないかと、私は思うけど……」

「うそぉ」

「というか、もし最終的に受け入れる、ってなったら、参戦は間違いないじゃない」

「えー……」


あんな、見るからに火花バチバチなところに?いや、それだけは遠慮したいんだけども……。無理かしら?


「待て。恋愛問題は置いておけと言っただろう。殿下があまりに不憫だったから、避けられるのはどうかと思って散々言ったが、兄としては、それとこれとは話が別なんだが」


「……まぁ、参戦する羽目になっても、私が影から見守っててあげる」

「いや、それ、私が皇太子をどうやって攻略するか見たいだけよね?」

「ふふん!近くで、生の別シナリオを楽しませてもらうわ」

「……ものすごく複雑なんですけど……でも、もう逃げたくないし」

「まぁ、そうでしょうね」


「……おい、待て待て。そういう感じになるなら、話は別だと、」


「エミリちゃん。見守るだけじゃなくて、ちゃんと助けてね」

「しょうがないから、これからどうしたらいいか、一緒に考えてあげるって言ったでしょ。言っとくけど、私だってそんな恋愛経験あるわけじゃないんだからね」

「いやー、でもアラフォーとしては若者のきゃっきゃな感じと、乙女ゲームで培っただろう恋愛スキルは侮れないから……」

「いや、もう、そういうところが駄目。あんたも今は若者でしょ!」


「言って、るんだが……」

「……アヴェルさま。あの、お嬢様方、全然話聞いてませんけど」

「……」

「というか、問いたださないからと、色々謎の言葉が飛び交ってますが、大丈夫ですかね?まぁ、他では気を付けるとは思いますが……」

「……ロイ、今すぐ我が妹の頭をスコーンと一発叩いたら、今の一連の記憶が飛んだりしないだろうか」

「……阿保ですか?」

「うああああ。余計な話をしなければよかった……!」

「……」

(やっぱり兄妹だよなぁ、頭の抱え方がそっくりだ)






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