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お兄さまの語り形式になります。
昔。そうだな、お前が皇太子殿下と初めて出会った茶会より二、三年は前ぐらいか。
俺は殿下の話し相手として皇宮に招待された。え?そうそう、そうだったのですよ。お前は知らなかったみたいだが、何度か皇宮に行ってたんだよ、お兄さまは。
というのも、今までずっと殿下の話し相手として側にいた侯爵家の子息が来れなくなったからだった。なんでも、その姉が皇女殿下に無礼な振る舞いをしたとかで、閉め出されたらしい。
あー……リーアは皇女殿下と仲がよかったんだったな。まぁ怒るな。昔の話だと言っただろう。皇女殿下を軽んじる子息やら令嬢が少なからずいたんだよ。
でもまぁ、殿下がそういうことによく気付く方だった。だから、その時もすぐに発覚して、すぐに対処がなされたわけだ。皇女殿下に直接無礼な振る舞いをした姉はもちろん、その弟にまでな。
とはいえ、同じ歳くらいの交流はやっぱり必要だと大人たちは考えていたから、すぐに代わりは探された。それが俺だったというわけだ。
俺は最初にその話を聞いたとき、そこまでする必要あったのか?と疑問に思った。だって、皇女殿下に無礼な振る舞いをするくらいだから、その姉は性格が悪いんだろう。でも、その弟は別に悪さをしたわけじゃない。
なのに、折角今までずっと殿下の話し相手をつとめていたわけだから、仲だってよかっただろうに、あっさり遠ざけられて。その話し相手も、殿下も、少なからず寂しい、じゃないが、そんな気持ちがあるだろうな、可哀想に。
ぐらい、思っていたんだ、俺は。
その日、皇宮で数人の子息令嬢を呼んでの茶会が開かれた。どういう理由で開かれたやつだったかは忘れたが、その頃何度か皇宮に招待されていた俺も、まぁ当然のように参加だった。
その道中だったな。元々皇太子の話し相手だった子息が他の子息たちとまとまって話をしていたんだ。なんでまたそんなところで……と俺は思ったが、同時にその子息もちゃんと招待されたんだな、と若干安堵の気持ちで見てたんだ。
子息は大きな声で言った。
「いやぁ、毎度毎度、見張られてるみたいで怖かったんだよな。でも、俺からは皇太子殿下に会いたくないなんて言えないだろ?だから、父には悪いけど、今回話し相手を外されてむしろよかったと思ってるんだよ」
俺は思わず顔をしかめた。姉も姉なら、弟も弟だと思ったね。
子息たちは時々笑いも交えながら話をしていた。
聞くにたえないな、と流石にそこから移動しようとしたとき、皇太子が目の前にいたんだ。子息たちの声は、ばっちり聞こえていただろう位置だった。
「殿下……」
「やぁ、アヴェル」
そりゃ、気まずかったのなんの。だってな?今まで話し相手として一緒にいた期間も長かっただろうに、仲がいいと思っていた相手が、実は一緒にいるのが嫌だった、だなんて堂々と言ってるんだぞ?普通に話しかけてきたけど、内心はショックを受けてるだろうな、と思うに決まってるだろ?なのに。
「あの……殿下」
「ん?」
「あまり、気になさらないで下さい。あの子息はまだ子どもなんですよ」
「……」
殿下は本当になんのことか分からない、みたいな顔をしてからなんでもないように「あぁ……」と言った。
「今の話?別に気にしてないけど」
「……は?」
気丈に振る舞ってるとか、そんな感じでは全然なかった。
殿下は、本気で全然気にしてなかったんだ。
「見張られてるみたい、っていうのもあながち間違いではないしね」
「え」
「使えるか、全く使えないのか、今のうちから判断してるんだよ。どうせあっちは、こっちと純粋に仲良くなろうなんて思ってないしね。実際、あの子だって来たくもないのに皇宮まで来て、しゃべりたくもないのににこにこべらべらしゃべってたわけだから。まぁ、あの子は全然使えなさそうだったから、そのうち来なくていいって言うつもりだったんだ。その前にあの子のお姉さんの件があったんだけど……。まあ、ああいう風に思えてるなら、幸せなんじゃない?お気楽だよね」




